狂言の演目と鑑賞

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※大蔵流では『末広・末広かり』、和泉流では『末広かり』と表記します。


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ある果報者[金持ち]が、目上の人に「末広がり」というものを贈るため、家来の太郎冠者を呼びつけ都へ買いに行くよう命じます。都に着いた冠者は、末広がりとは何か、どこにあるのかを聞かなかったことに気づいて困った挙げ句、物売りを真似て「末広がりを買おう」と呼び歩きます。そこにすっぱ[詐欺師]が現れ、言葉巧みに古傘を売りつけます。主人の注文どおりの品が手に入ったと思い込み喜ぶ冠者に、すっぱは、主人の機嫌を直す囃し物を教えます。帰宅した冠者が得意げに報告すると、あきれた主人は冠者を追い出します。思案した冠者は、すっぱに教わった囃し物をうたい足で拍子をとると、主人もつりこまれて機嫌を直します。

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この曲は、「末広がり[先にゆくほど運が開ける様子]でめでたい」とされる扇をめぐる、祝言性の高い作品です。太郎冠者の取り違えによる失敗談を描いた狂言は数多くありますが、ここでは主人の「地紙よく、骨がみがかれ、要(かなめ)がしっかりして、ざれ絵が書かれたもの」という扇への注文を、すっぱが巧みに傘の話にすり替えるおかしさがポイントです。間違いをおかしても最後はめでたく舞い納め、傘をかざした冠者と主人がリズムに合わせて囃す姿は、晴れやかでいかにもめでたい気分にあふれています。舞台をひとめぐりするだけで、都に着いたり家に帰ったりと、どんな遠くへもたどり着けるという狂言の約束ごとを見ることができます。

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[すっぱが太郎冠者に教えた囃し物より]

「かさを差すなる春日山、これも神の誓ひとて、人がかさを差すなら、我もかさを差さうよ。げにもさあり、やようがりもさうよの」

参照:「狂言はやわかり>演技>ことば」で上記の囃し物を聞けます。


『末広かり(すえひろがり)』

『末広かり』[大蔵流]
シテ[果報者]/13代目・茂山千五郎、アド[太郎冠者]/茂山宗彦、笛/10代目・寺井久八郎
2008年[平成20年]2月6日 国立能楽堂第566回定例公演 [写真:青木信二(国立能楽堂)]

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