狂言の演目と鑑賞

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主人から、茶会で使う水を野中の清水へ汲みに行くように命じられた家来の太郎冠者は、面倒なので、七つ[午後4時]すぎると、あのあたりは鬼が出るから嫌だと断りますが、主人は承知せず家宝の桶を持たせて追い出します。太郎冠者が鬼に襲われたふりをして帰ってくると、主人は家宝の桶を惜しみ、みずから清水へ行くといいだします。先回りした冠者が鬼の面をかぶって脅すと、主人は命乞いをして逃げ出しますが、冠者に都合のいいことばかり言う鬼の言葉や、冠者そっくりの鬼の声など不審な点が多いので、もう一度清水へ確かめに行きます。冠者はもう一度鬼に扮して脅すものの、今度は正体を見破られ、主人に追われて逃げて行きます。

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だれでも仕事をさぼりたくなる時がありますが、太郎冠者はそれをごまかすために主人を驚かしただけにとどまらず、調子に乗って余計なことをしたために、嘘がばれてかえって面倒なことになってしまいます。野中の清水は名水として知られ、播磨国(はりまのくに)の印南野(いなみの)[現在の兵庫県、播磨平野の一部]に湧き出ていたと言われます。印南野は狂言ではよく鬼と出会う場所として出てくるので、太郎冠者は鬼にからめた嘘をつくわけです。鬼に化けるのに用いる面は、「武悪(ぶあく)」といい、曲によっては地獄の鬼や閻魔大王といった本物の鬼にも使います。ぎょろっとした目に大きい鼻、歯をむき出しにしたいかめしい顔つきですが、どこか愛嬌があります。狂言に登場する鬼は、間が抜けていたり人間にやり込められてしまったりするキャラクターなので、それにふさわしい面といえます。

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[太郎冠者が鬼のふりをして主人を追い回した脅す場面より]
太郎冠者「いで食らおう、アア、アア。ヤイヤイ、ヤイそこなやつ」
主人「ハアー」
太郎冠者「おのれは憎いやつの。七つ下がって人の来ぬところへ来おった。さだめて武辺だてであろう。あたまから一口にいで食らおう」

『清水(しみず)』

『清水』[和泉流]
シテ[太郎冠者]/石田幸雄、アド[主]/2代目・野村萬斎
2005年[平成17年]10月21日 国立能楽堂第512回定例公演(YN0110512001010)

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