狂言の演目と鑑賞

前へ萩大名(はぎだいみょう)次へ

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京での長い訴訟を終えた遠国(おんごく)[地方]の大名が気晴らしに、太郎冠者に案内させ、清水寺に参詣しがてら茶屋で萩見物をすることにします。ところが茶屋では萩の花を詠み込んだ歌を作る慣例があると聞いて、歌を詠んだことがない大名はいやがります。そこで冠者は「七重八重九重とこそ思ひしに十重咲き出ずる萩の花かな」という歌を大名に教え、7、8、9などの数字を扇の骨で示し、「萩の花」では自分のすねはぎ[足のすね]を見せるなど、歌を思い出させるヒントを出すことにします。ところが大名は、茶屋の亭主にとんちんかんなことばかり言い、たまりかねた冠者は先に帰ってしまいます。残された大名は、歌の最後の七文字を思い出せず苦しまぎれに「太郎冠者の向こうずね」と口走り、恥をかきます。

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枝ぶりのよい庭の梅を見て「切って茶臼の引き木にしたらよい」などと失言を繰り返したり、せっかく太郎冠者がジェスチャーでヒントを出しても間違えたり……。本曲に登場する大名は滑稽な言動で笑いを誘いますが、決して愚かなわけではなく、武骨な田舎育ちで雅び(みやび)な世界に縁がないことを示します。狂言に登場する大名は、江戸時代の大名とは異なり、各地の地主くらいの階級なのです。曲中、大名が太郎冠者を「すねはぎばかり伸びおって」と言っていつも叱るという台詞がありますが、これは「図体ばかり大きくなって」くらいの意味の言葉です。日頃役立たずと叱りつけている相手に、今日は全面的に頼っているという立場の逆転も面白いところです。

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[残された大名と茶屋の亭主のかけあいより]
大名「いや今思い出した」
亭主「何と」
大名「物と」
亭主「何と」
大名「十重咲き出づる」
亭主「十重咲き出づる」
大名「太郎冠者が向ふずね」
亭主「あのやくたいもない。とっととお行きやれ」
大名「面目もおりない」

『萩大名(はぎだいみょう)』

『萩大名』[大蔵流]
シテ[大名]/4代目・山本東次郎、アド[亭主]/山本則直
2002年[平成14年]11月6日 国立能楽堂第444回定例公演(YN0110444001012)

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