狂言の演目と鑑賞

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近ごろは人間が賢くなって、みな極楽へ行ってしまうので、地獄は思わぬ飢饉(ききん)になっています。そこで今日は、閻魔(えんま)大王が自ら六道(ろくどう)の辻へ出て、娑婆(しゃば)から来る罪人を地獄へ責め落そうと待ちかまえています。するとそこへ1人の男がやって来たので、閻魔大王はここぞとばかり責めますが、男は全く動じません。閻魔大王が不審に思って名を問うと、剛勇無双かくれもない朝比奈三郎義秀(あさいなのさむろうよしひで)です。あきらめた閻魔大王は、かわりに朝比奈に和田合戦の様子を語らせるのですが、話の間も首筋をつかまれ引き回されたり、投げ飛ばされたりと、さんざんな目に合った挙げ句、とうとう極楽浄土に案内させられる羽目になります。

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和田合戦とは、朝比奈の父、和田義盛(わだよしもり)が鎌倉幕府を襲撃して破れた戦いのことで、朝比奈が幕府の南大門を破った話は「朝比奈の門破り」として有名です。朝比奈が合戦の模様を語るうち、だんだんと型が加わって仕方話(しかたばなし)[写実的な動作を交えた語り]になっていくところは、語りの芸を味わう聞きどころです。六道の辻は、人が死後に分かれ行く六道[地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上 (じごく・がき・ちくしょう・しゅら・にんげん・てんじょう)]の分岐点です。本来なら地獄の主・閻魔大王と、剛勇無双の朝比奈三郎の両雄の対決が期待されますが、狂言に出てくる鬼たちの例にもれず、閻魔大王は完全に翻弄されてしまいます。強いはずの閻魔大王が弱々しく、亡者の朝比奈が堂々として強いという逆転のおかしみがあります。

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[閻魔大王の名乗りより]
閻魔大王「当代は人間が利根[利巧]になり、八宗九宗に宗体[しゅうてい]を分け、極楽へばかり、ぞろりぞろりとぞろめくによって、地獄の餓死以ての外(もってのほか)な」

『朝比奈(あさいな)』

『朝比奈』[大蔵流]
シテ[朝比奈]/山本則重、アド[閻魔]/山本則俊
2007年[平成19年]11月25日 山本会別会 [写真:青木信二(国立能楽堂)]

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