狂言の演目と鑑賞

前へ蝸牛(かぎゅう)次へ

  • あらすじ
  • 鑑賞のポイント
  • 詞章

蝸牛[かたつむり]を進上すれば祖父(おおじ)の寿命が伸びるというので、主人は家来の太郎冠者に蝸牛を捕ってくるよう命じます。蝸牛が何か全く知らない冠者に、主人は「頭は黒く、腰に貝をつけ、折々角を出し、藪にいる」と教えます。藪の中を探して旅疲れで寝ている山伏を見つけた冠者は、山伏の頭が黒いので起こして蝸牛かと尋ねます。勘違いに気づいた山伏は、からかってやろうと蝸牛のふりをします。すっかり信じた冠者が、主人の元へ一緒に来るよう頼むと、山伏は囃子物(はやしもの)に乗るならば行こうと言い、冠者に「雨の風も吹かぬに……」と囃させ、自分は「でんでんむしむし」と言いながら舞い、2人は浮かれ出します。そこへ帰りが遅いと業を煮やした主人がやってきて冠者を叱りますが、最後はつり込まれ、3人で囃しながら退場します。

  • あらすじ
  • 鑑賞のポイント
  • 詞章

「頭は黒く、腰に貝をつけ」という手がかりが、黒い兜巾(ときん)を頭にかぶり、腰に法螺貝を付ける山伏の様子にあてはまり、およそ似るはずもないかたつむりと山伏を取り違えるという設定は、狂言ならではの大胆な発想です。山伏とは修験道(しゅげんどう)の行者(ぎょうじゃ)のことで、祈祷(きとう)やお祓(はら)いをして人から尊敬される立場のはずですが、本曲の山伏は少々たちの悪い人物のようです。太郎冠者がうたう囃子物は、顔を出さないと殻を打ち割ってしまうぞと、かたつむりに言いかけるような意味で、中世の京都の子ども達がうたったものです。太郎冠者の歌に山伏が絶妙な間で合いの手を入れ調子を上げていくと、聞いているだけで自然に心が浮き立ちます。

  • あらすじ
  • 鑑賞のポイント
  • 詞章

[すっかり山伏にだまされた太郎冠者が囃し物に乗って浮かれ出す場面より]
太郎冠者「ハア、雨も風も吹かぬに、出(で)ざ かま打ち割ろう、出ざ かま打ち割ろう」
山伏「でんでんむしむし。でんでんむしむし」

『蝸牛(かぎゅう)』

『蝸牛』[和泉流]
シテ[山伏]/4代目・野村小三郎、アド[主]/野口隆行、小アド[太郎冠者]/12代目・野村又三郎
2002年[平成14年]9月14日 国立能楽堂第225回普及公演 (YN0210225002006)

ページの先頭に戻る