中城若松(なかぐすくわかまつ)と宿の女が出会う場面から「干瀬節(フィシブシ)」が、3度連続で歌われます。この歌はいずれも女の心情を表しており、心の変化が読み取れます。
中城若松(なかぐすくわかまつ)と宿の女が出会う場面から「干瀬節(フィシブシ)」が、3度連続で歌われます。この歌はいずれも女の心情を表しており、心の変化が読み取れます。
[詞章] | [読み] | [現代語訳] |
---|---|---|
里と思ば、のよで | サトゥトゥミバヌユディ | 貴方と知っていたらどうして |
いやでいふめ御宿。 | イヤデイュミウヤドゥ | 御宿を断りましょうか |
冬の夜のよすが | フユヌユヌユスィガ | 長い冬の夜を明かして |
互に語やべら。 | タゲニカタヤビラ | 互いに語りましょう |
[詞章] | [読み] | [現代語訳] |
---|---|---|
及ばらぬ里と | ウユバランサトゥトゥ | 及ばない貴方と ※ |
かねてから知らば | カニティカラシラバ | かねて知っていたら |
のよで悪縁の | ヌユディアクヰンヌ | どうして悪縁がこのように |
袖に結びやべが | スディニムスィビャビガ | 袖に結べましょうか |
[詞章] | [読み] | [現代語訳] |
---|---|---|
悪縁の結で、 | アクヰンヌムスィディ | 悪縁が結ばれてしまっては |
はなちはなされめ。 | ハナチハナサリミ | 離そうとしても離されない |
ふり捨てゝいかは、 | フリスィティティイカワ | 私を振り捨てて行ったら |
一道だいもの。 | チュミチデムヌ | 一緒に死ぬしかない |
宿の女に追われた若松が、必死で末吉(すえよし)の寺に逃げ込み、座主(ざす)[住職]に命を助けてくれるよう頼む場面です。このとき、唱えを定型の八六調ではなく七五調に変えることで、若松の切羽詰まった心境を表現しています。
[詞章] | [読み] | [現代語訳] |
---|---|---|
一夜かりそめの | イチヤカリスミヌ | 一夜ほんの束(つか)の間の |
宿の女、 | ヤドゥヌヲゥンナ | 宿を借りた女 |
悪縁の縄の | アクヰンヌツィナヌ | 悪縁の綱は |
はなちはなさらぬ。 | ハナチハナサラン | 離そうとしても離せない |
終に一道と | ツィーニチュミチトゥ | 共に死のうと |
跡から追付き、 | アトゥカラウッツィキ | 後から追いかけ |
露の命を | ツィユヌイヌチヲゥ | 危うい命を |
とらんとよ。 | トゥラントゥユ | 取ろうという |
行く末吉の | ユクスィユシヌ | 行く末よいという末吉の |
この御寺、 | クヌウティラ | この御寺に |
頼まば終に | タヌマバツィーニ | 頼もうと、とうとうやって来た |
我が命、 | ワガイヌチ | 私の命を |
たんで御助け、 | タンディウタスィキ | どうかお助けください |
わがいのち。 | ワガイヌチ | 私の命を |
物語後半の鬼女と僧達のせめぎ合いは、この物語の見どころであり、聴きどころでもあります。舞台の激しさもさることながら、女の離れがたい気持ちと経文の対決を、それぞれ笛と太鼓の音楽で表現している点にも注目してください。見どころページでも紹介しています。