はじめての歌舞伎はじめての歌舞伎

成り立ち歴史役柄の歴史は、歌舞伎の歩みに重なります。

近代化する歌舞伎

西欧化と芸術化

『東京第一之劇場 新富座大当ノ図』
3代目歌川広重 画
国立劇場所蔵(NA091530)

1868年、江戸は東京へと改名。西欧化を進める政府の方針のもと、庶民の芸能であった歌舞伎にも、西欧的な舞台芸術への変化が求められます。時代物を史実に即して演出したり、より格式の高い芸能である能楽の様式を取り入れたりしますが、観衆の多くは、江戸時代の雰囲気を保つ作風の歌舞伎を、支持し続けました。

『東京第一之劇場 新富座大当ノ図』
3代目歌川広重 画
国立劇場所蔵(NA091530)

新しい演劇の波

短髪などの新しい風俗を取り入れた『島鵆月白浪』
歌川周重 画
国立劇場所蔵(NA060350)

それまで、歌舞伎の台本は劇場に属する作者によって書かれていましたが、文学者や新聞記者などによって戯曲として書かれ上演されることが増えます。西欧の演劇が歌舞伎へ翻案して演じられる一方、短髪や洋装などの新しい風俗による世話物の歌舞伎が作られました。また、芸術性の高い翻訳劇として演じようとする「新劇(しんげき)」やその時代の世相や人情をよりわかりやすく描こうとする「新派(しんぱ)」が生まれます。写実性を重んじる新劇や新派では、女性の役を演じる女性の俳優が誕生しました。

短髪などの新しい風俗を取り入れた『島鵆月白浪』
歌川周重 画
国立劇場所蔵(NA060350)

伝統と創造

『小春穏沖津白浪』
小狐礼三:尾上 菊之助【5】
国立劇場(Y_E0100298500514)

こうした新しい波を受けながら、20世紀にかけて歌舞伎は次第に古典化していきます。従来の役柄の設定を洗練させたり、西欧の影響による写実的な側面も備えた、近代的な人物造形も行われていきました。2005(平成17)年にはユネスコにより「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」として宣言、2008(平成20)年に「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されました。海外で公演が行われたり、漫画やアニメの作品を原作とする新作が作られたりする現代においても、伝統を踏まえた新しい役柄が創造され続けています。

『小春穏沖津白浪』
小狐礼三:尾上 菊之助【5】
国立劇場(Y_E0100298500514)

ページの先頭に戻る