キャラクターについて
忍者みたいな人が舞台にいるけど?
全身黒い服装の人は、黒衣(くろご)といいます。歌舞伎では、「黒は観客からは見えないもの」という約束があります。彼らは、なるべく目立たないよう、道具の出し入れや、舞台の上で俳優の衣裳の着替えを手伝います。
変身することはあるの?
観客を楽しませる演出として、歌舞伎には一瞬(いっしゅん)にして衣裳が変わる仕掛けがあります。キャラクターが、それまで隠(かく)していた本性をあらわすときなどに用いられます。衣裳を変えることで、性格の変化を表現するのです。
女性のキャラクターが活躍する演目を教えて?
たくさんありますが、姫役が活躍するのは、『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』・『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』・『鎌倉三代記(かまくらさんだいき)』の三作品が有名です。
この他『加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』や『助六(すけろく)』、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』も外せません。舞踊(ぶよう)では『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』が代表作として挙げられます。
一つの演目の中で複数の役柄を演じることはある?
歌舞伎公演では、一つの演目の中で一人の俳優が二つ以上の役柄を演じることが時々あります。『お染の七役(おそめのななやく)』のように、一人の俳優がいくつもの異なる役柄を演じるファン必見の演目もあります。
衣裳やかつら、化粧について
かつらの種類はどのくらいあるの?
立役(たちやく)で1000程度、女方(おんながた)は400程度あります。役柄の年齢(ねんれい)・身分・職業などに合わせて使い分けます。
お化粧は誰かがしてくれるの?
子役以外は、俳優が鏡を見ながら自分で化粧をします。道具も俳優が使いやすいものを自分で選び、演じる役に合わせて化粧の方法を工夫します。
衣裳は昔から華(はな)やかだったの?
江戸時代から歌舞伎は華やかな衣裳で、観客の目を楽しませてきました。当時は有名な俳優は自前で作ったため、各自が少しでも目立つようにと競って豪華な衣裳を工夫しました。
衣裳は毎回新しいものを作るの?
歌舞伎では同じ演目がたびたび上演され、それぞれの作品の衣裳には決まりがあるため、公演のたびに、衣裳を新しく作ることは基本的にはありません。現在は衣裳は衣裳会社に保管されていて、毎回劇場に貸し出されます。しかし新作や久しぶりに復活された作品の衣裳は新しく作られます。
舞台について
客席の中にある長い廊下(ろうか)みたいなものって何?
花道(はなみち)といいます。場面によってさまざまな場所に変化します。例えば屋内の場面では廊下に、屋外の場面では道になります。舞台より客席に近い花道を使った演技は、歌舞伎独特のもので観客に強い印象を与えます。
上演中、音楽が流れていますが、どこで演奏しているの?
舞台下手(しもて:客席から見て舞台左側)にある簾(すだれ)のさがっている黒い部屋で生演奏をしています。舞台上手(かみて:客席から見て舞台右側)には、竹本(たけもと)が演奏する御簾(みす)の部屋があります。
歌舞伎独特の3色の幕について教えて?
定式幕(じょうしきまく)といいます。「定式(じょうしき)」とは、いつも使うものという意味があり、定式幕はいつも使われている幕という意味です。開演のときは舞台下手(しもて:客席から見て舞台左側)から上手(かみて:客席から見て舞台右側)に向かってあいていきます。
鑑賞について
上演中の掛け声(かけごえ)は誰が掛けてもいいの?
基本的には誰が掛けてもいいのですが、掛けるタイミングが大変難しいです。そのためその作品をよく理解して、どこで掛ければいいのか分かってからの方がいいでしょう。「〇〇屋」というのは、その俳優の屋号(やごう)といって、俳優が所属する家ごとに決まっています。
初めてでも舞台を楽しめる?
歌舞伎には「こう見なければいけない」という決まりがあるわけではありません。好きな俳優を見たり、豪華な衣裳や大道具(おおどうぐ)を楽しんだりと様々な見方があります。
また、国立劇場では、解説と演目鑑賞の2部で構成された公演「鑑賞教室」を開催しています。初心者や親子、外国人のためのプログラムが組まれることもあります。
歌舞伎はどこで見られるの?
定期的に歌舞伎が上演されるおもな劇場と所在地は以下の通りです。
- 国立劇場(こくりつげきじょう)・・・東京都千代田区【初代国立劇場は、令和5年10月末から再整備等事業のため閉場しています。】
- 歌舞伎座(かぶきざ)・・・東京都中央区
- 新橋演舞場(しんばしえんぶじょう)・・・東京都中央区
- 大阪松竹座(おおさかしょうちくざ)・・・大阪府大阪市中央区
- 京都南座(きょうとみなみざ)・・京都府京都市東山区
- 御園座(みそのざ)・・・愛知県名古屋市中区
その他
200年以上前に活躍した、俳優の顔や演技のことがどうして分かるの?
17世紀半ばくらいより、俳優の容姿や演技について書かれた『役者評判記(やくしゃひょうばんき)』や、俳優みずからが演じ方などを語った出版物が、数多く発行されました。
それらの資料から、各時代の名優や演技を知ることができるのです。
昔はどんな人たちが歌舞伎をみていたの?
主に庶民(しょみん)です。昔は現在のように映画館やテーマパークなどはありません。江戸時代の庶民の娯楽(ごらく)といえば、歌舞伎や相撲(すもう)、花見や神社やお寺をお参りすることが中心でした。なかでも歌舞伎は江戸や大坂などの大都会では、大変人気がありほぼ一年中上演されていました。
歌舞伎で使用する書体はありますか?
タイトルや看板やなどに使用される文字は、「勘亭流(かんていりゅう)」と呼ばれていて、18世紀後半が始まりとされています。劇場の中に観客が隙間(すきま)なく入るようにと縁起(えんぎ)をかついで、内側に入るような筆の運びで、太く隙間がないように書かれています。
二枚目=イケメン。その意味は?
美しい男子を意味する「二枚目(にまいめ)」という言葉は、俳優の名前を書いた看板を劇場に飾(かざ)る時、美しく若い男性で和事(わごと)の役を得意とする俳優の看板を二枚目に飾ったことからきています。
歌舞伎に関係する、お弁当があるってほんとう?
「幕の内弁当(まくのうちべんとう)」という言葉は、歌舞伎から始まりました。「幕の内」という言葉には「幕と幕の間の休憩(きゅうけい)時間」という意味があります。劇場では、この休憩時間に食べる何種類かのおかずのついた弁当を「幕の内弁当」といっていました。この言葉が一般的になったというわけです。