(本文ここから)
能 (喜多流) 『自然居士』 平成14年6月14日 国立能楽堂
〔シテ〕塩津哲生
●季節:無季 ●場数:2場 ●舞台:前半:都の雲居寺(うんこじ[観世流はうんごじ])[京都府京都市]、後半:近江の国大津[滋賀県大津市] ●登場人物:〔シテ〕自然居士、〔子方〕童女、〔ワキ〕人商人、〔ワキツレ〕同伴の人商人、〔アイ〕雲居寺門前の者
放下僧(ほうかぞう)[大道芸の一種である放下を僧形で演ずる遊芸人]である自然居士は、ある少女が美しい着物と供養を願う書付を差し出すのを目にします。書付には両親の供養のために着物を捧げるとありました。そこへ男たちがやってきて少女を連れ去ります。着物は、少女が身を売って得たものだったのです。居士は少女が連れ去られたと聞き、説法を中止して跡を追い、舟の出る大津に急行します。居士は、着物と引き替えに少女を返すよう求めると、一度買い取った者は返さぬ掟があると断られますが、こちらにも身を売った者を見殺しにできぬ掟があり、自分も少女といっしょに行くしかないと言って舟から下りず、男たちを屈服させます。男たちは腹いせに、評判の舟の曲舞(くせまい)、ささら舞[ささらという和楽器を使った舞]、羯鼓(かっこ)[鼓(つづみ)を横にしたような雅楽の打楽器「羯鼓」を身に付けて撥(ばち)で打ちながらの舞]と、次々に芸を見せることを要求しますが、居士は少女のために拒むことなく演じて見せ、ついに少女を連れ戻すことに成功します。
(本文ここまで)