生きて高野山にいるという、夫・平維盛を尋ねて旅に出た妻子主従は、吉野の茶店で通りがかった男から強請りに遭います。実は茶店の主であった、いがみの権太というこの無頼漢は、女房から改心を促されます。
平維盛(たいらのこれもり)を尋ね、高野山へ向かう若葉の内侍(わかばのないし)と六代君(ろくだいぎみ)は、主馬小金吾武里(しゅめのこきんごたけさと)を供に吉野下市村にさしかかります。一行は小仙(こせん)の茶屋で休息し、若君の気晴らしのために木の実を拾います。
通りがかりの男が、茶屋の床几(しょうぎ:腰掛け)に荷物を置き、小石を投げて木の実を落としてくれました。男が立ち去った後、小金吾が自分の荷物のわずかな違いに気づき、中を確認すると別のものです。
小金吾が駆け出すところへ、先程の男も慌てて戻って来ます。男は軽率さを詫び、小金吾は中身に相違のないことを確認しました。ところが、男は自分の荷物の中の銀(かね)を紛失したと騒ぎ立てます。男の明らかな強請(ゆす)りに腹を立てて小金吾は刀を抜きますが、若葉の内侍に抱き留められ、やむを得ず銀を与え、一行は立ち去りました。
様子をうかがっていた小仙が、男の悪事を責めます。男は小仙の夫、いがみの権太(ごんた)と呼ばれる無頼漢で、釣瓶鮓屋(つるべすしや)を営む親の弥左衛門(やざえもん)からも勘当されています。小仙は夫に改心を促しますが、権太は母親からも銀をだまし取ってこようとします。しかし、子の善太(ぜんた)に取りすがられ、さすがの権太もその場は思い止まり親子は帰宅するのでした。