舞台と演技舞台の構造

能楽は、能舞台という専用の空間で演じられます。とくに建物のなかに造られたものを能楽堂と呼びます。

一般的な劇場と違って、能舞台は見所(けんしょ[客席])へ突き出しているうえ、幕がありません。照明や大掛かりな装置などを使った演出もありません。観客はそれぞれの席から、何もない空間から上演が行われ、そしてまた何もない空間に戻るまでの一部始終を見届けることになります。

舞台の構造

本舞台(ほんぶたい)

舞台は正方形で、奥の板には松が描かれています。屋根を支える四隅の柱は、仮面のために視野が狭くなる演者が、動く際の目印にもなっています。また、声楽や器楽など演者の役割に応じ、舞台に繋がる形で座る場所が設けられています。

橋掛り(はしがかり)

舞台は、渡り廊下のような「橋掛り(はしがかり)」によって、楽屋と結ばれています。ここは、演者が出入りしたりするだけでなく、現実世界と霊界とをつなぐ路(みち)を表したり、演出のうえで大切な場所です。

鏡の間(かがみのま)

橋掛りの楽屋側には、演者たちが出番を待つ部屋があります。主役を演じる者は、ここで大きな鏡に身を映しながら仮面を着け、役に入っていきます。また、器楽の奏者たちは、ここでそれぞれの楽器を鳴らしてチューニングを行い、これが開演の合図ともなるのです。

屋内なのに、なぜ舞台に屋根があるの?

かつて能楽は、屋外の舞台で演じられることが通例でした。しかし明治期に、一つの建物のなかへ、舞台も客席も収める能楽堂というかたちが生まれ、それが主流になったのです。能楽堂が、屋内なのに屋根や柱を備えたり、客席とのあいだに玉石を敷いたりしているのは、屋外で演じられていた頃の様式を受け継いでいるためです。