手足の動きを誇張して、歩いたり走ったりする様子を象徴的に表現した演出です。
おもに「荒事(あらごと)」の役が「花道(はなみち)」を引込む時に演じられ、力強さと荒々しさを観客に強く印象付けます。
「六方」には、豪快な動作の中に狐のしぐさを垣間見せる「狐六方(きつねろっぽう)」や、手の動きは盗賊らしく大きく、足の動きは遊女という「傾城六方(けいせいろっぽう)」など、さまざまな種類があります。中でも有名なものとして、『勧進帳(かんじんちょう)』の弁慶(べんけい)などで行なわれる「飛び六方(とびろっぽう)」が挙げられます。
『鳴神(なるかみ)』の幕切の「六方」。鳴神上人が、雲の絶間姫(くものたえまひめ)に騙されたことを知り、怒りを爆発させて後を追っていく様子を象徴的に表現しています。