作品のあらまし
鎌倉時代(12~14世紀)の曽我兄弟(そがきょうだい)による敵討ちに取材した作品で、通称『曽我の対面(そがのたいめん)』、または『対面(たいめん)』とよばれています。
父を工藤祐経(くどうすけつね)に討たれた曽我十郎(そがのじゅうろう)・五郎(ごろう)の兄弟は、正月に工藤の館を訪ね、敵(かたき)の工藤と対面します。工藤は、富士の裾野で行なわれる狩りの総奉行職を勤めた後で、兄弟に討たれることを約束します。
曽我兄弟が苦労の末に父の敵の工藤祐経を討ち、兄の十郎はその場で討たれ、弟の五郎は捉えられた後に討たれた一連の事件は、『曽我物語(そがものがたり)』という物語によって一般に流布し、庶民の支持を受けました。
江戸の歌舞伎では、非業の死を遂げた曽我兄弟の登場する作品を毎年正月に上演することで、兄弟の鎮魂と国土安穏を祈りました。
舞台上には歌舞伎の代表的な役柄が勢ぞろいして、絵画的な様式美にあふれています。
見どころ
様式化されたこの作品の登場人物の多くは、典型的な役柄で演じられます。
左から
曽我五郎:「荒事(あらごと)」の役柄
曽我十郎:「和事(わごと)」の役柄
工藤祐経:「座頭(ざがしら)」が演じる役
小林朝比奈:ユーモラスな道化役
化粧坂少将(けわいざかのしょうしょう・五郎の恋人):若い「女方(おんながた)」が演じる役

左から
曽我五郎:「荒事(あらごと)」の役柄
曽我十郎:「和事(わごと)」の役柄
工藤祐経:「座頭(ざがしら)」が演じる役
小林朝比奈:ユーモラスな道化役
化粧坂少将(けわいざかのしょうしょう・五郎の恋人):若い「女方(おんながた)」が演じる役