作品のあらまし
「竹本(たけもと)」・「長唄(ながうた)」・「常磐津(ときわず)」の3つの「音曲(おんぎょく)」によって、伴奏される舞踊です。平維茂(たいらのこれもち)による信州の戸隠山(とがくしやま)の鬼女退治を描いた同名の能の作品から歌舞伎化されました。
戸隠山へ紅葉狩りに訪れた維茂は、更科姫(さらしなひめ)という姫に出会い、勧められるままに酒を飲みます。やがて更科姫は鬼女の正体をあらわして、酔いつぶれた維茂に襲い掛かりますが、維茂は名刀小烏丸(こがらすまる)によって難を逃れます。
1人の俳優が、前半の「赤姫(あかひめ)」とよばれる典型的なお姫様の姿と、後半の激しい動きで維茂と戦う鬼女の姿を踊り分ける点に見どころがあります。
見どころ
平成2(1990)年11月
国立劇場大劇場 第162回歌舞伎公演
『紅葉狩』
更科姫 実は 戸隠山の鬼女:中村 雀右衛門【4】
更科姫の踊りの見どころは、2枚の扇を使用した振りがついている通称「二枚扇(にまいおうぎ)」とよばれる部分です。初演した9代目團十郎本人による苦心の振付で、お姫様の踊りとしては大胆な振りです。映像の場面の直後には、鬼女の本性を見せて、酔いつぶれて寝ている維盛を垣間見る部分があります。