作品のあらまし
常磐津(ときわず)の舞踊で、通称は『関の扉(せきのと)』です。
舞台は、小町桜が咲き誇る雪の逢坂の関(おおさかのせき)。関近くに住む良峰少将宗貞(よしみねのしょうしょうむねさだ)のもとに恋人の小野小町姫(おののこまちひめ)が訪ねてきて、関守の関兵衛(せきべえ)の素性を怪しむのが前半です。後半は、関兵衛が天下を狙う大悪人の大伴黒主(おおとものくろぬし)、遊女・墨染(すみぞめ)が小町桜の精、というそれぞれの本性をあらわして争います。多くの場合、小町姫と墨染の2役は1人の女方が演じます。
見どころ
平成3(1991)年1月
国立劇場大劇場 第164回歌舞伎公演
『積恋雪関扉』「逢坂山関所の場」
関守関兵衛 実は 大伴黒主:市川 團十郎【12】
隠していた素性や身分を見破られたことにより、自ら本性を明らかにする演出を「見顕し(みあらわし)」といいます。多くの場合、仕掛けによって衣裳を一瞬で変える「ぶっ返り」の手法が用いられ、視覚的にも本性をあらわしたことを表現します。この作品は、黒主だけではなく遊女・墨染も小町桜の精に見顕すという珍しいケースです。