ユネスコ無形文化遺産 歌舞伎への誘い INVITATION TO KABUKIユネスコ無形文化遺産 歌舞伎への誘い INVITATION TO KABUKI

演目主な演目

しばらく

時代物

作品のあらまし

清原武衡(きよはらのたけひら)が、自分の意に従わない人々を家来に命じて斬ろうとするところに、「しばらく」という声とともに鎌倉権五郎(かまくらごんごろう)が登場し、人々の命を助けるというストーリーです。

江戸歌舞伎では、俳優は芝居小屋と1年ごとに契約を結びました。その契約のスタートする11月の興行は「顔見世(かおみせ)」とよばれ、一座する俳優の顔ぶれを披露する最も重要な年中行事でした。この「顔見世」で上演される作品には、おもな俳優が一堂に会し、「しばらく」という声とともに登場する正義感あふれる人物が、悪人に殺されかけている人々を救う場面を組込む慣習がありました。

「顔見世」で上演されたさまざまな作品で、何度も演じられたこの場面は、次第に洗練されていき、一定の演出が完成しました。明治以降は、この場面を『暫』として独立させて上演するようになり、現在に至っています。このような経緯で誕生したため、ストーリーを楽しむというよりも様式化された演出を楽しむ演目といえます。

主人公は代々の市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)が得意とした「荒事(あらごと)」で演じられるため、『暫』は團十郎家の「家の芸」である「歌舞伎十八番」の1つに数えられています。

見どころ1

『暫』には、一座のおもな俳優の顔ぶれを披露する意味があったため、さまざまな役柄が登場します。

『吉例暫』
国立劇場所蔵(NA050940)

1)鎌倉権五郎:役柄は荒事(あらごと)
2)清原武衡 :役柄は公家悪(くげあく)
3)入道震斎(しんさい):道化役

『吉例暫』
国立劇場所蔵(NA050940)

1)鎌倉権五郎:役柄は荒事(あらごと)
2)清原武衡 :役柄は公家悪(くげあく)
3)入道震斎(しんさい):道化役

見どころ2

権五郎が、「花道(はなみち)」で一気に語る長ぜりふは「ツラネ」とよばれます。「荒事」の芸の1つである雄弁術を聞かせるせりふで、掛詞(かけことば)などをもりこんだ内容は、基本的には上演の都度変えられます。

見どころ3

権五郎が「花道」から「本舞台(ほんぶたい)」に来て両肌を脱いでいる間、舞台上では、「アーリャー、コーリャー」という声が繰り返され、権五郎の「見得(みえ)」に合わせて最後に「デッケエ」という声が上がります。この声を「化粧声(けしょうごえ)」といい、「荒事」の登場人物に対してかけられる褒めことばです。『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』の曽我五郎などでも掛けられます。