ユネスコ無形文化遺産 歌舞伎への誘い INVITATION TO KABUKIユネスコ無形文化遺産 歌舞伎への誘い INVITATION TO KABUKI

特徴

観客を楽しませるために

舞踊を基礎とし、劇的な構成を持ち、音楽的な魅力も備えた、総合的な芸能である歌舞伎。その多彩な表現は、観客を楽しませるために生み出されました。

俳優と観客との交歓

『青砥稿花紅彩画』「稲瀬川勢揃いの場」
国立劇場(Y_E0200040005016)

歌舞伎では、俳優を具体的に特定しながら役を決め、見せ場を想定しながら物語が作られました。観客も、物語の進展を楽しむのと同じくらいに、ときにはそれ以上に、舞台に立つ俳優たちとの交歓を楽しんだのです。そのために、物語の進展からすると不合理な、俳優たちの見せ場のためだけにあるような場面さえ生み出されました。

たとえば、江戸時代の終わり頃(19世紀半ば頃)に、財宝や金銭を奪う泥棒たちの物語が、次々と演じられました。その代表作の一つ『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』[通称『白浪五人男(しらなみごにんおとこ)』の「稲瀬川勢揃いの場(いなせがわせいぞろいのば)」では、 追われる身の5人の泥棒たちが、「志ら浪=白浪(しらなみ:泥棒のこと)」と大きく書かれた傘を手にして川土手へ並び、一人ひとり名乗りながら、自分たちがいかに大した泥棒であるかを誇示していきます。 現実においてはまず起こり得ないこの場面は、歌舞伎においては、5人の俳優たちが勢揃いする華やかな見せ場として人気があります。

どんなに誇張されても美しさを保つ演技、 目を見張らせる刺激に満ちた扮装、立体的な動きで時間や空間を操る舞台装置、情景を引き立て役者と絡み合う音楽。さらには、観る側との暗黙の約束事を踏まえた物語の進展や、それぞれの時代の先端の風俗や出来事を取り込む演出など、あらゆる要素を駆使して観客を楽しませようとする姿勢が、歌舞伎には息づいているのです。

『青砥稿花紅彩画』「稲瀬川勢揃いの場」
国立劇場(Y_E0200040005016)

楽しみ方は、あなた次第

『しらぬい譚』「(筑前)博多菊地館奥庭の場」
国立劇場(Y_E0100302500414)

歌舞伎は江戸時代、商人や職人、勤め人や奉公人など、社会に暮らす幅広い層の人に親しまれてきました。彼らは、自分に合ったそれぞれの楽しみ方で歌舞伎に接してきたのです。

現代では、歌舞伎で使われる言葉や、扱われる生活、風俗などが、少しわかりにくく感じられるかもしれません。しかし、バラエティーに富んだ演目、目を惹く演技や華やかな舞踊、美しい音楽や鮮やかな衣裳、舞台の仕掛けを駆使した演出など、歌舞伎には人を楽しませる工夫がたくさん施されています。自分にあった楽しみ方を、きっとどこかで見つけられるはずです。

『しらぬい譚』「(筑前)博多菊地館奥庭の場」
国立劇場(Y_E0100302500414)