ユネスコ無形文化遺産 文楽への誘い An introduction to BUNRAKU

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文楽人形 首の種類

男役(立役:たちやく)の首(かしら)

男役の首は、女役の首に比べて種類が多く、動く仕掛けも工夫されています。首にはそれぞれ名前があり、初めて使われた演目の役が、その名の由来となっていることが通例です。

文七ぶんひち
文七
検非違使けんびし
検非違使
源太げんだ
源太
大団七おおだんひち
大団七
団七だんひち
団七
孔明こうめい
孔明
若男わかおとこ
若男
大舅おおしゅうと
大舅
白太夫しらたゆう
白太夫
鬼一きいち
鬼一
与勘平よかんべえ
与勘平
陀羅助だらすけ
陀羅助
鬼若おにわか
鬼若
祐仙ゆうせん
祐仙
又平またへい
又平
文七ぶんひち
文七

太い眉に薄く開いた口もと、強い意志と力の宿る目。男役を代表する首で、何かにじっと耐えているような、悲劇的な主人公や敵役などに用いられます。
時代物:『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』熊谷直実(くまがいなおざね)、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』松王丸(まつおうまる)など。世話物:『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)など

『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛
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検非違使けんびし
文七

文七よりも小さめで、少し優しさのある首。口を閉じてきりっと整った知的な顔立ちです。大名から端役まで幅広く用いられますが、敵役には用いられません。
時代物:『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』知盛(とももり)、『絵本太功記(えほんたいこうき)』真柴久吉(ましばひさよし)など。世話物:『桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)』帯屋長右衛門(おびやちょうえもん)など

検非違使
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源太げんだ
源太

元服後の二枚目役の若者に用いられます。品良くしまった顔立ちで、肌の色は白。眉と目が動くものと動かないものがあります。
時代物:『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』早野勘平(はやのかんぺい)、『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』源義経(みなもとのよしつね)、『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』呉服屋十兵衛(ごふくやじゅうべえ)など

源太
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大団七おおだんひち
大団七

顎が張り目鼻立ちが豪快な、ふてぶてしさのある大きな首です。眉や口を動かす仕組みがあり、時代物の荒々しい立役に用いられます。
時代物:『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』和藤内(わとうない)、『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)など

大団七
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団七だんひち
団七

大団七より少し小ぶりで、小団七(こだんひち)ともいい、眉は動きません。悪役に見えながら、のちに改心する無頼漢などに用いられます。
時代物:『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』いがみの権太(ごんた)など。世話物:『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』だはの勘六(かんろく)など

団七
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孔明こうめい
孔明

聡明で品があり、意志の強さを感じさせます。家老や公家など、40〜50代の思慮深い性格の役柄に用いられます。
時代物:『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』大星由良助(おおぼしゆらのすけ)、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』菅丞相(かんしょうじょう)など

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若男わかおとこ
若男

源太よりさらに若く、初々しい10代の少年の役柄。やや頬がふっくらして、眉や口もとが優しい表情です。顔の動きはありません。
時代物:『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』大星力弥(おおぼしりきや)など。世話物:『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』久松(ひさまつ)など

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大舅おおしゅうと
大舅

顎が張って目も口も大きく、尊大で不敵な面構えを持つ、老け役の首。時代物で敵役の武将などに用いられます。
時代物:『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』瀬尾十郎(せのおのじゅうろう)、『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』高師直(こうのもろなお)など

大舅
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白太夫しらたゆう
白太夫

目尻が下がり、歯が抜けて口元がすぼまった柔らかく純朴な顔立ち。人柄の良い田舎の老け役に用いられる首です。
時代物:『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』白太夫(しらたゆう)、など。世話物:『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』久作(きゅうさく)など

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鬼一きいち
鬼一

太い眉と強い目が厳しい表情を見せますが、人情に厚く風流を理解する心をもった老け役の首です。時代物で重要な役柄に用いられます。
時代物:『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』加古川本蔵(かこがわほんぞう)、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の大判事清澄(だいはんじきよずみ)など

鬼一
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与勘平よかんべえ
与勘平

額は出っ張り、目は丸く大きく、口をぎゅっと結んだ個性的な表情をしています。時代物で忠義な脇役や、愛嬌のある敵役などに用いられます。
時代物:『芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』与勘平(よかんべえ)、『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』蛇の目の眼八(じゃのめのがんぱち)

与勘平
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陀羅助だらすけ
陀羅助

険のある目つきと「への字」の口が、嫌みな表情を作ります。頑固な侍や、それほど大物でない敵役などに使われています。
時代物:『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』薬師寺次郎左衛門(やくしじじろうざえもん)など。世話物:『曽根崎心中(そねざきしんじゅう)』油屋九平次(あぶらやくへいじ)など

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鬼若おにわか
鬼若

10代の元気な少年。丸顔で二重あご、目が大きく、頬にはえくぼがあります。一文字に結んだ口もとが、負けず嫌いな性格を感じさせます。
時代物:『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』杉王丸(すぎおうまる)など。世話物:『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』放駒長吉(はなれごまちょうきち)など

鬼若
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祐仙ゆうせん
祐仙

三枚目の首のひとつで、大きな眉や口が動きます。笑いを誘う役柄でありながら、どこか哀愁を感じさせる面持ちです。
『花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)』才蔵(さいぞう)など

祐仙
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又平またへい
又平

素朴で律儀な三枚目の脇役で、眉や口を大きく動かします。
時代物:『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』又平(またへい)など。世話物:『近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)』猿回し与次郎(さるまわしよじろう)など

又平
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