本水を使用した滝の場面 『新世紀累化粧鏡』3代目中村橋之助の与右衛門 2001年(平成13年)3月国立劇場
舞台【ぶたい】上で使われる本物の水のこと。通常歌舞伎で水を表現する場合、下座【げざ】で雨音【あまおと】を表現したり、海や川の場面を大道具【おおどうぐ】に描【えが】いたりとさまざまな工夫をし、本物の水は使いません。しかし場合によっては、特別に本当の水を使うことがあります。
江戸時代の芝居小屋【しばいごや】には当然ながら冷房【れいぼう】設備がありません。そのため人が多く集まる小屋の中は、大変な暑さとなりました。そこで少しでも涼【すず】しさを演出するため、本水は特に夏の芝居で使われました。その他にも、世話物【せわもの】をリアルに表現するために使う場合もあります。例えば、舞台に本水の雨を降らせたり、井戸【いど】からくんだ本水を俳優が実際にかぶったりする演出もあります。
映像は、滝の場面を大量の本水を使用して演出した例です。