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『花伝』は、世阿弥の代表的な能楽論で、次の7篇が応永(おうえい)年間に徐々に成立しました。
- 風姿花伝第一年来稽古条々(ふうしかでん だいいち ねんらいけいこ じょうじょう)
- 風姿花伝第二物学条々(~だいに ものまね じょうじょう)
- 風姿花伝第三問答条々(~だいさん もんどう じょうじょう)
- 風姿花伝第四神儀(~だいし しんぎ)
- 奥儀(おうぎ)
- 花伝第六花修(かでん だいろく かしゅ)
- 花伝第七別紙口伝(かでん だいしち べっし くでん)
主な内容として、「風姿花伝第一年来稽古条々」は年齢に応じた稽古の指針、「風姿花伝第二物学条々」は9種類の物まねについての論、「風姿花伝第三問答条々」は演能に際しての注意点や演技についての論などで、問答条々だけ問答形式で記されています。「風姿花伝第四神儀」では申楽の起源説を、「奥儀」ではあらゆる風体を演じこなして広い観客層を納得させることの重要性などを説いています。「花伝第六花修」は能の台本を書く上での教えや演技論、芸位論などであり、「花伝第七別紙口伝」は観客に珍しさを感じさせる能の「花」をテーマにした最高の秘伝となっています。
なお、『風姿花伝』という名称は、世阿弥が「風姿花伝第一年来稽古条々」から「奥儀」までに対して付けた書名であり、「花伝第六花修」と「花伝第七別紙口伝」のそれぞれは、「風姿花伝第一年来稽古条々」から「奥儀」までとは別に書かれ伝えられたものです。最近の研究では、7篇全体を指す書名としては『花伝』を用いるのが一般的です[『花伝書』は誤称]。
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