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能 (宝生流) 『西行桜』 平成12年1月30日 国立能楽堂
〔シテ〕高橋章
●季節:春 ●場数:1場 ●舞台:山城の国嵯峨の西行庵[京都府京都市] ●登場人物:〔シテ〕桜木の精、〔ワキ〕西行法師、〔ワキツレ〕花見の人々、〔アイ〕西行庵の能力[寺の下働きの男]


嵯峨の奥に住まいする西行の庵には桜の名木がありました。修行の障り(さわり)になるのをおそれて、今年の春は花見客の訪問を受け付けまいと決心しますが、都の者たちから乞われると、仕方なく見物を許します。都の者たちは今を盛りと咲く桜を愛でて花見に興じます。その様子を見て西行は、花の散るのを静かに眺めて心を澄まそうとしたのに、俗世の人々に妨げられたのは桜のせいであると歌に詠みます。夜になり花の下でまどろんでいる西行のもとへ老人が現れ、桜に罪はないとさとします。そして自分はこの老木の桜の精であると名乗り、物言わぬ草や木もこうした道理を教えさとすことで、今度は悟りえた西行に導かれて仏の知遇を得ることになるのだと喜びます。老木の精は都周辺の名所の桜を案内して西行を楽しませ、やがて夜明けとともに姿を消します。西行が目覚めると辺り一面には雪のように花が散り敷いているのでした。
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