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能 (金春流) 『葵上』 平成11年6月22日(午前) 国立能楽堂
〔シテ〕本田光洋 〔ツレ〕本田芳樹
●季節:無季 ●場数:2場 ●舞台:都の左大臣邸[京都府京都市] ●登場人物:〔前シテ〕六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の生霊、〔後シテ〕鬼相の六条御息所の生霊、〔ツレ〕照日の巫女(てるひのみこ)、〔ワキ〕横川小聖(よかわのこひじり)、〔ワキツレ〕廷臣[朝廷に仕えている臣]、〔アイ〕左大臣家の従者


朱雀院(すざくいん)に仕える臣下が、光源氏の正妻である葵上の病の原因を突き止めるために、照日の巫女を左大臣邸に招きます。巫女が弾く梓の弓[神事などで魔除けに鳴らす弓]の音に引かれて、六条御息所の生霊が現れ、皇太子妃としての華やかな昔の暮らしをしのび、源氏の愛を失った恨みを綿々と述べます。ついには病床の葵上に打ちかかり、なおも恨みと我が身の嘆きを訴えると、葵上をあの世へ連れ去ろうと言って姿を消します。すると葵上の容態が急変し、今度は横川小聖が呼ばれ、祈祷が行われます。御息所は鬼女の姿となって再び現れ、小聖に立ち向かいますが、祈り伏せられてしまいます。高貴な身分で理性的な御息所の心は、葵上への嫉妬と恨みから生霊となり、ついには鬼の姿となります。恋の恨みと嫉妬という目に見えない人間の感情を、視覚的に表現している曲です。
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