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能の所作は、「カマエ」と呼ばれる立ったまま腰に力を入れあごを引いた姿勢と、「ハコビ」と呼ばれる床に足の裏を付けてかかとを上げない歩き方が基本になっています。歩行のスピードがどんなに速くなっても、安定した腰の位置と滑らかな足の動きは、崩れてはならないとされています。一見すると能の動きは緩やかで、じっと動かない場合も多いのですが、たとえ立っているだけでも、そこには日常的な動作とは異なる特殊な身体の使い方があり、非常に強い力と緊張が働いているのです。
〔演技〕観世喜正
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