今様は、平安時代中期から鎌倉時代初期にかけて流行した歌謡です。今様とは「当世風」という意味で、白拍子(しらびょうし)*1などが歌い、伴奏楽器には、鼓、笛や笙などが用いられ、貴族から庶民まで広く愛好されました。歌は、七五調の4句*2を基本としていることが特徴です。今様歌謡の集成として『梁塵秘抄(りょうじんひしょう) *3』が知られています。
- *1白拍子(しらびょうし):
平安末期から鎌倉時代にかけて流行した歌舞。また、それを演じる遊女。今様などを歌い、水干・立烏帽子(たてえぼし)・佩刀(はいとう)の男装で舞ったので男舞といわれました。のちの曲舞(くせまい)などに影響を与えたほか、能にも取り入れられました。 - *2七五調の4句:
次の例のように、七五調の句を4つ連ねている歌のことです。
「仏は常に在(い)ませども 現(うつつ)ならぬぞあはれなる
人の音せぬ暁(あかつき)に ほのかに夢に見え給(たま)ふ」
(梁塵秘抄 巻第二 法文歌 佛歌) - *3 『梁塵秘抄(りょうじんひしょう) 』:
1169年(嘉応元年)頃、後白河院(1127-1192)は、今様歌謡の集成である『梁塵秘抄』を編纂しました。現存する『梁塵秘抄』には、約560首の歌が収められています。
紫式部や清少納言も愛好した?
『紫式部日記(むらさきしきぶにっき)』や『枕草子(まくらのそうし)』などに「今様歌」の記述がみられ、11世紀頃の平安貴族の間で流行していた様子がうかがえます。

東京国立近代美術館所蔵
