観る各宗派の声明

各宗派の声明の特徴

 仏教儀式のための音楽として伝わった声明。各宗派では、 開祖 の経歴や宗派が開かれた時代背景、また新たに中国から伝わった教えなど、外部からの影響を受けながら、それぞれに独自の発展を遂げています。
 中でも、声明というものを体系化・理論化して発展させた天台宗(てんだいしゅう)と真言宗(しんごんしゅう)の声明が果たした役割は大きく、日本の声明の二大流派などともよばれています。天台声明はゆったりとした優美な唱えで女性的、対する真言声明はダイナミックな力強い唱えで男性的などといわれています。

宗派とは

 かつての東大寺大仏 開眼供養会 では、さまざまな宗派が一堂に会して声明を唱えたという記録があり、もともとは宗派による大きな違いはなかったと考えられています。
 しかし、仏教伝来からこれまでの長い歴史のなかで、 釈迦 の教えに対するさまざまな解釈・考え方が生まれ、多くの宗派が開かれているように、その声明も各宗派の成り立ちや環境(時代・土地柄など)から、独自の特徴を持って受け継がれています。

 日本の声明の歴史をさかのぼってみると、天台宗と真言宗の声明に行きつきます。天台宗では開祖 最澄 が伝えた声明を 円仁 が、真言宗では開祖 空海 が宗内に広め、その伝承が始まりました。特に平安末期から鎌倉期にかけて興った宗派においては比叡山(ひえいざん)で修学して開祖となった僧侶が多く、天台声明の影響をみることができます。また宗内においても、分派して独自の展開をするなど、天台声明・真言声明の存在は大きなものとなっています。
 ここでは、各宗派に伝わる声明を、声明の二大流派といわれる天台宗・真言宗、日本で最も古くから伝わる仏教である南都(奈良)六宗、おもに天台宗から派生した鎌倉時代に浄土教を根本として生まれた宗派、そして日蓮宗、禅宗と、おおよそ系統別にしてご紹介します。

豆知識 13宗派
現在では156の宗派(※)があるという仏教ですが、その教義や歴史などを踏まえて、伝統的な宗派として、次の13宗派の名前が挙がります。成立順に、法相宗(ほっそうしゅう)・華厳宗(けごんしゅう)・律宗(りっしゅう)・天台宗・真言宗・融通念佛宗(ゆうずうねんぶつしゅう)・浄土宗(じょうどしゅう)・臨済宗(りんざいしゅう)・浄土真宗(じょうどしんしゅう)・曹洞宗(そうとうしゅう)・日蓮宗(にちれんしゅう)・時宗(じしゅう)・黄檗宗(おうばくしゅう)です。おおよそこの13宗派から、多数の仏教教団が分派・独立して多くの宗派が新設され、現在に至ります。
※文部科学大臣所轄包括宗教法人数(『宗教年鑑 令和4年度版』より)
豆知識 総本山・大本山・本山
総本山とは、各宗派の本山を取りまとめる寺院のことをいいます。宗派における最高位の寺院が総本山ということができます。この総本山に次ぐのが大本山・本山で、宗派内の末寺を取りまとめる、特別な地位にある寺院をいいます。格の高さでいうと、総本山、大本山、本山となります。
豆知識 声明を聴くことのできる場所
全国各地の寺院では、一般に公開している法要であれば、誰でも声明を聴くことができます。近年ではインターネットによる動画配信やSNSなどで声明を公開している寺院もあり、世界のどこからでも声明に親しむことができるようになりました。
また、東京の国立劇場では年1回程度、大阪の国立文楽劇場では隔年に1回程度、声明を上演するなど、劇場で声明を聴く機会も増えてきています。

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