義太夫節において、三味線弾きは、そのベースとなる調子とさまざまな場面で演奏される旋律を駆使して太夫の語りを色付け、また物語の雰囲気を作り上げます。
基本となる「本調子」
調子とは演奏する際の音程のことをいい、三本の糸の相対的な音程のバランスで調子が決まります。義太夫節の多くの曲で演奏される基本となる調子を「本調子」といいます。また、演奏の中で変化をつける時などには「二上り(にあがり)」「三下り(さんさがり)」といった調子も使われます。「本調子」は本格的・男性的、「二上り」は派手・陽気、「三下り」は女性的・優美・悲哀などと結びつくといわれます。
旋律
義太夫節には、旋律の型が数多くあります。それぞれに意味をもって演奏され、観客を物語の世界へ引き込んでいきます。
ソナエ
一段の始まりに、太夫が語りだす前に三味線だけで演奏する前奏をいいます。多くは通し狂言の始まりの大序で演奏され、荘重な雰囲気を作り上げます。
オクリ
オクリは、前の場面を受けて次の場面へ義太夫節を語り続けるときに演奏される旋律です。次に展開される場面の設定や雰囲気を受けて演奏されるので、状況によって違う演奏となります。そのほか登場人物の退場などでも演奏されます。
四段目のオクリ
全五段で構成される時代物の四段目の中で受け渡すオクリです。
節オクリふしおくり
道行(みちゆき:登場人物が目的地に向かう道中の情景を華やかに描いた場面)で演奏されるオクリで、やや長めの華麗な旋律です。
三重
主に場面が替るところで演奏される旋律で、場面終わりで演奏されるものや初めに演奏されるものが多くあります。また、立回り(たちまわり:戦闘の場面)や行列の行進、道具替りなどで演奏される三重(さんじゅう)もあり、その用途はさまざまです。
大道具を転換している間の演奏から、三重へと続く演奏です。