落語をはじめ上方芸能に新作を提供し続けている小佐田定雄による新作です。おかあちゃんが怒ると怖いという設定は、落語『船弁慶(ふなべんけい)』に登場する“雷のお松(かみなりのおまつ)”というあだ名の気の強い女房からきています。
文楽では珍しい廻り舞台の使用をはじめ、宙乗り(ちゅうのり:ワイヤーで吊り上げられた人形遣いが舞台や客席の上を移動する演出)など、舞台機構を生かした演出のある作品です。大人から子供まで楽しめるような工夫が凝らされています。

写真の場面
助けてもらった寅(とら)ちゃん一家に、トロ吉(とろきち)が、自分が雷さんであることや雲から落ちてきた理由を話しています。
『かみなり太鼓』
令和元年(2019)7・8月
国立文楽劇場 第155回文楽公演(YRD0100155500053)
あらすじ
天神祭が近づいた夏の暑い日。太鼓屋の寅ちゃんの家に、空から雷のトロ吉が落ちてきました。太鼓が苦手で雲に上手く乗れないトロ吉は、寅ちゃんのおかあちゃんが怒った大声に驚いて落ちてしまったというのです。雲の上に帰るため、トロ吉は寅ちゃんの家の太鼓で練習を始めます。おとうちゃんと寅ちゃんと一緒に練習を続けるうち、ついにゴロゴロと立派に太鼓を打てるようになったトロ吉は、雲に乗って天へと帰っていくのでした。