元禄8年(1695)に半七(はんしち)と三勝(さんかつ)が心中した事件を題材とした上中下三巻の作品です。事件同年に上演された歌舞伎『茜の色揚(あかねのいろあげ)』や紀海音(きのかいおん)作の享保4年(1719)『笠屋三勝廿五年忌(かさやさんかつにじゅうごねんき)』などの先行作品の影響を受けて作られました。
「今頃は半七つぁん、どこにどうしてござろうぞ」というクドキは、広く知られています。
映像の場面
親たちが奥の間に去り1人になったお園(おその)は、戻らない半七を恨むどころか、恋い慕う思いを切々と語ります。
『艶容女舞衣』酒屋の段
平成28年(2016)10・11月
国立文楽劇場 第144回文楽公演
あらすじ酒屋の段さかやのだん
茜屋半兵衛(あかねやはんべえ)の息子・半七は、芸者の三勝と深い仲であったため、妻のお園は実家へ戻されています。泣き暮らす娘を不憫に思い、お園の父は改めて嫁にしてほしいと頼みに来ます。つれなく応じる半兵衛でしたが、いずれ刑死する半七の嫁とするのは申し訳ないと思ってのことでした。お園は、帰らぬ夫を恋い慕い、深く嘆きます。
お園は、置き去りにされた幼子が、半七と三勝の子だと気づきます。子の懐には、未来はお園と本当の夫婦に、という半七の手紙がありました。門口に忍んできた半七と三勝は密かに別れを告げ、心中へと急ぐのでした。