菅丞相(かんしょうじょう:菅原道真[すがわらのみちざね])が藤原時平(ふじわらのしへい)の陰謀によって九州の太宰府(だざいふ)に左遷され、怨霊となって天変地異をもたらしたという伝説を題材とした全五段の作品です。当時話題になった三つ子の誕生を物語に盛り込みながら、忠義を尽くす人々の姿や、親子の別れを描きます。『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』とともに三大名作の1つに数えられています。

写真の場面
覚悟の用意をしていた白装束姿となった松王丸(まつおうまる)夫婦は、忠義のために犠牲にした我が子を、あくまで菅秀才(かんしゅうさい)として弔います。
『菅原伝授手習鑑』寺子屋の段
平成29年(2017)4月
国立文楽劇場 第146回文楽公演(YRD0100146500179)
あらすじ寺子屋の段てらこやのだん
寺子屋を営む武部源蔵(たけべげんぞう)は、かつて仕えていた菅丞相の子・菅秀才をかくまっています。菅秀才を探す時平の家来・春藤玄蕃(しゅんどうげんば)に、菅秀才を討つよう命じられた源蔵は、今日寺入りした小太郎(こたろう)の首を討って身代りとします。検分役の松王丸が、菅秀才の首に違いないと断言し、源蔵夫婦は安堵しますが、実は、丞相の恩に報いようと、松王丸夫婦が菅秀才の身代りとして小太郎を入門させたのでした。白装束姿となった松王丸夫婦は、源蔵夫婦とともに悲しみの中、我が子の死出の旅立ちを見送るのでした。