元禄15年(1702)に元赤穂(あこう)藩の浪士たちが、主人の仇(あだ)を討った赤穂事件を題材とした、全十一段で構成される作品です。本作は事件発生から47年目に上演され、「忠臣蔵」が赤穂事件の代名詞となるほど、有名になりました。史実の大石内蔵助(おおいしくらのすけ)は大星由良助(おおぼしゆらのすけ)、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は塩谷判官(えんやはんがん)、吉良上野介(きらこうずけのすけ)は高師直(こうのもろのお)とするなど、登場人物や時代背景を太平記(たいへいき)の世界に移し変えています。
映像の場面
由良助が読む密書を、おかるは誰かからの恋文かと2階から手鏡で覗き、縁の下からは斧九太夫(おのくだゆう)が盗み読んでいます。
敵討ちへの決意を表した由良助は、裏切り者の九太夫を捻(ね)じ伏せます。
『仮名手本忠臣蔵』祇園一力茶屋の段
平成28年(2016)12月
国立劇場小劇場 第197回文楽公演
あらすじ祇園一力茶屋の段ぎおんいちりきぢゃやのだん
祇園の一力茶屋で連日遊びにふける由良助のもとに、判官の妻・顔世御前(かおよごぜん)からの密書を持って息子・力弥(りきや)が現れます。由良助は遊女・おかるに身請け話を持ち掛けますが、これは密書を読んだための口封じと気づいたおかるの兄・寺岡平右衛門(てらおかへいえもん)は、敵討ちに加わるために妹を斬ろうとします。様子を伺っていた由良助は、平右衛門に敵討ちへの参加を許し、おかるに元塩谷家臣でありながら今は師直に通じる斧九太夫を討たせて、亡き夫・早野勘平(はやのかんぺい)の代りに功を取らせるのでした。