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ファンと錦絵(にしきえ)

錦絵とは

多色で刷られた精巧な木版画が、「錦絵(にしきえ)」です。江戸時代の中頃(18世紀半ば)に、技法が確立されました。その鮮やかな色彩は大きな人気を集め、現在では美術品としても高い評価を受けています。

浮世絵と錦絵

貴族や武士、僧侶などのために描かれていた宗教画や物語絵に対し、同じ時代の風俗を描いた絵画が「浮世絵(うきよえ)」です。16世紀頃から、屏風(びょうぶ)や巻紙、掛軸(かけじく)などへ直接描かれていましたが、17世紀の半ばには、版画によって量産され安く手に入るようになったため、庶民(しょみん)のあいだでも楽しまれるようになりました。はじめは、墨(黒色)による単色でしたが、18世紀半ばに多色刷りの「錦絵(にしきえ)」が登場すると、さらに人気を集め、20世紀初めまで幅広い人たちに親しまれました。

錦絵や絵入りの本など、娯楽的な作品を出版・販売する「魚栄」の店先
3代目歌川豊国 画
国立国会図書館所蔵(寄別8-4-1-9)

錦絵や絵入りの本など、娯楽的な作品を出版・販売する「魚栄」の店先
3代目歌川豊国 画
国立国会図書館所蔵(寄別8-4-1-9)

プロ同士のコラボ

錦絵は、原画の複製ではありません。さまざまな専門家が分業し、同じ絵柄の原画を何枚も生み出していく、共同制作による絵画です。まず、出版社や書店にあたる「版元(はんもと)」が、題材や企画を考えます。そして、画家やイラストレーターである「絵師(えし)」が、版元の意向に沿って下絵を描きます。木を彫る「彫師(ほりし)」は、その下絵の細部を造形しながら、土台となる版木(はんぎ)を作ります。その版木から作られた単色刷りをもとにして、絵師が絵の配色を決め、彫師が今度は色用の版木を作るのです。「摺師(すりし)」は、色合いの濃淡や面積などを考えながら刷る順番を決め、墨や調合した絵の具を版木に乗せ、紙に刷り上げていきます。

分業による出版の製作過程を面白おかしく描いている
十返舎一九 画
国立国会図書館所蔵(207-541)

分業による出版の製作過程を面白おかしく描いている
十返舎一九 画
国立国会図書館所蔵(207-541)

人物も風景も

身近に楽しむ絵画として広まった錦絵では、さまざまな題材が取り上げられました。なかでも、人の姿は人気の絵柄で、歌舞伎の俳優を描いた「役者絵」や、女性の美しさを描いた「美人画」のほか、相撲(すもう)の力士や、歴史・伝説上の勇者・武者なども、さかんに描かれ、人気者のブロマイドやポスターのようにして扱われたのです。また、全国の景勝地を描いた「名所絵」も、ポストカードやパンフレットのようにして親しまれ、なかなか旅行へ出かけられなかった庶民の目を楽しませました。

36種の花から連想する俳優の当たり役を描いた連作の1枚
3代目歌川豊国 画
国立劇場所蔵(NA061080)

江戸の名所である隅田川が描かれている
鈴木春信 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP2780)

美人と評判であった浅草・難波屋のおきた
喜多川歌麿 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP3018)

江戸時代の庶民の娯楽だった相撲の土俵入りを描いている
2代目歌川豊国 画
国立国会図書館所蔵(本別7-27)

36種の花から連想する俳優の当たり役を描いた連作の1枚
3代目歌川豊国 画
国立劇場所蔵(NA061080)

江戸の名所である隅田川が描かれている
鈴木春信 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP2780)

美人と評判であった浅草・難波屋のおきた
喜多川歌麿 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP3018)

江戸時代の庶民の娯楽だった相撲の土俵入りを描いている
2代目歌川豊国 画
国立国会図書館所蔵(本別7-27)

美術品としての鑑賞

広く親しまれた錦絵ですが、工芸品や美術品としての高い価値も備えていました。流行を先取りする版元の企画や、見るものを驚かせる絵師の画力はもちろんですが、髪の毛の一筋まで精細に彫り分ける彫師の技巧や、何百、何千もの枚数へ同じ調子でグラデーションを施すことができる摺師の熟練など、優れたセンスや技術、経験から生み出される錦絵は、絵画としての魅力に富んでいます。とくに、1867年のパリで開かれた万国博覧会で紹介されたことで、西欧の絵画へも大きな影響を与えました。

富士山を様々な場所から描いたシリーズのうちの一枚
葛飾北斎 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP2565)

ゴッホの作品「タンギー爺さん」の肖像の背景に描かれている錦絵
3代目歌川豊国 画
国立劇場所蔵(NA0074588000)

富士山を様々な場所から描いたシリーズのうちの一枚
葛飾北斎 画
メトロポリタン美術館所蔵(JP2565)

ゴッホの作品「タンギー爺さん」の肖像の背景に描かれている錦絵
3代目歌川豊国 画
国立劇場所蔵(NA0074588000)

名所江戸百景

関東各地から王子稲荷社の近くに狐たちが集まり、参拝するという伝承を題材にしている
初代歌川広重 画
国立国会図書館所蔵(寄別1-8-2-1イ)

画家のフィンセント・ファン・ゴッホが模写した亀戸天神社裏の梅園を描いた錦絵
初代歌川広重 画
国立国会図書館所蔵(寄別1-8-2-1)

関東各地から王子稲荷社の近くに狐たちが集まり、参拝するという伝承を題材にしている
初代歌川広重 画
国立国会図書館所蔵(寄別1-8-2-1イ)

画家のフィンセント・ファン・ゴッホが模写した亀戸天神社裏の梅園を描いた錦絵
初代歌川広重 画
国立国会図書館所蔵(寄別1-8-2-1)

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