文楽編・菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

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ひもとく | 作品の概要

三段目 桜丸切腹の段

  • あらすじ
  • 鑑賞のポイント
  • 詞章
  • 松王丸は勘当を願い出、桜丸は丞相流罪の責任を感じ、父と妻の前で切腹をします。

    平成23(2011)年2月<br>国立劇場小劇場 第174回文楽公演<br>『菅原伝授手習鑑』 桜丸切腹の段<br>八重:[5代目] 豊松 清十郎<br>桜丸:[3代目] 吉田 簑助<br>公演記録写真(Y_D0100174500759)

    梅王丸(うめおうまる)、松王丸(まつおうまる)は、白太夫(しらたゆう)に願いがあるとして、書面を差し出します。梅王丸は、菅丞相(かんしょうじょう)の許で世話をしたいと申し出ますが、白太夫は行方不明となっている丞相の妻子を探すようにと命じます。一方の松王丸の願いは、勘当です。これは聞き届けられましたが、白太夫は悪人の時平(しへい)に忠義を尽くすためなのかと怒りを露わにし、追い返すのでした。

    松王丸と千代(ちよ)の夫婦が帰ると、白太夫は梅王丸と春(はる)夫婦にも出て行けと言い、家には八重(やえ)だけが残ります。

    平成23(2011)年2月<br>国立劇場小劇場 第174回文楽公演<br>『菅原伝授手習鑑』 桜丸切腹の段<br>白太夫:[3代目] 桐竹 勘十郎<br>公演記録写真(Y_D0100174501085)

    すると奥から桜丸が刀を手に現れます。白太夫が、贈り物にと八重が持参した三方(さんぼう)の上に脇差(武士が腰に差す小刀)を載せてやってきます。桜丸は、これから切腹するというのです。八重は死なねばならない訳を聞かせてほしいと泣いてすがります。桜丸は自分が恋の取り持ちをしたことが原因で、菅丞相が謀反の濡れ衣を着せられ流罪になった責任を取るために、自害するのだと言います。

    白太夫はなんとか桜丸の命を助けたいと思ったのですが、女房の八重が切腹を連想させる三方を持参します。その八重と氏神参りに出かけ、おみくじがわりに引いた扇も悪い結果に。そして帰宅すれば折れた桜の木。不吉なことばかりが続くのでした。白太夫は桜丸の運命を悟り切腹を許します。八重は夫のあとを追おうとしますが、隠れて様子をうかがっていた梅王丸夫婦に止められます。白太夫は梅王丸たちに後事を託し、筑紫国へ旅立つのでした。

    • 白太夫、八重の悲嘆
  • 三段目の切は世話物に近い展開

    平成23(2011)年2月<br>国立劇場小劇場 第174回文楽公演<br>『菅原伝授手習鑑』 桜丸切腹の段<br>八重:[5代目] 豊松 清十郎<br>桜丸:[3代目] 吉田 簑助<br>白太夫:[3代目] 桐竹 勘十郎<br>公演記録写真(Y_D0100174501065)

    この段のクライマックスに当たる「三段目の切(きり)」(略して「三ノ切」)という場面です。物語全体の真ん中に当たる部分で、もっとも重要視される段の一つです。人形浄瑠璃の一座の中で最高位の太夫(たゆう)がこの段を担当することが多いのも、そういう理由からです。

    全段通して公家(くげ)や武士の世界を描く時代物の場合でも、三段目は庶民的な人物が登場する世話物(せわもの)に近い設定や展開が多くなっています。三大名作のひとつ『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』の三段目の切「すしやの段」でも、貴族や武将ではない、いがみの権太(ごんた)という庶民が主人公になっていて、世話物に近い表現となっています。

    江戸時代当時の観客の多くと同じ庶民を物語で活躍させることで、観る者に親近感を抱かせ、感情移入をしやすくさせる効果があったと思われます。

    松王丸の本心が垣間見える片手拝み

    平成23(2011)年2月<br>国立劇場小劇場 第174回文楽公演<br>『菅原伝授手習鑑』 桜丸切腹の段<br>松王丸:吉田 玉也<br>白太夫:[3代目] 桐竹 勘十郎<br>公演記録写真(Y_D0100174500744)

    父・白太夫(しらたゆう)から叩き出されるようにして実家を後にする松王丸(まつおうまる)。ここで、詞章には書かれていませんが、悟られないように片手でそっと拝む動きを見せます。藤原時平(ふじわらのしへい)に仕えているために親たちとは敵対関係にあり、それまで悪ぶった態度を見せていたものの、本心では名付け親である菅丞相(かんしょうじょう)に心を寄せ、父親に逆らってしまい申し訳ないという気持ちを、片手で拝み詫びる姿で表します。これは四段目「寺子屋の段(てらこやのだん)」の伏線となる大切な瞬間といえるでしょう。

    父の思いを込めた念仏に節回しの妙

    平成23(2011)年2月<br>国立劇場小劇場 第174回文楽公演<br>『菅原伝授手習鑑』 桜丸切腹の段<br>八重:[5代目] 豊松 清十郎<br>桜丸:[3代目] 吉田 簑助<br>白太夫:[3代目] 桐竹 勘十郎<br>公演記録写真(Y_D0100174500795)

    桜丸(さくらまる)が菅丞相流罪の責任を取り、ついに切腹することになります。父の白太夫も説得を諦め我が子の切腹をゆるします。桜丸の切腹に臨み白太夫は「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」と念仏を繰り返し唱えます。この念仏を太夫は深い想いを込めながら語り、聴く者の心に訴えかけます。


    • 白太夫、八重の悲嘆
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    1. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.1)
    2. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.2)
    3. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.3)
    4. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.4)
    5. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.5)
    6. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.6)
    7. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.7)
    8. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.8)
    9. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.9)
    10. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.10)
    11. 三段目 桜丸切腹の段(詞章 P.11)
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作品の概要
  • 初段
    • 大内の段
    • 加茂堤の段
    • 筆法伝授の段
    • 築地の段
  • 二段目
    • 道行詞甘替
    • 安井汐侍の段
    • 杖折檻の段
    • 東天紅の段
    • 丞相名残の段
  • 三段目
    • 車曳の段
    • 茶筅酒の段
    • 喧嘩の段
    • 桜丸切腹の段
  • 四段目
    • 天拝山の段
    • 北嵯峨の段
    • 寺入りの段
    • 寺子屋の段
  • 五段目
    • 大内天変の段
名場面集
  • 許されぬ勘当
  • 菅丞相の涙
  • 菅丞相と苅屋姫との別れ
  • 白太夫と八重の悲嘆
  • 緊迫の首実検
  • 切なさ極まるいろは送り
作中の人間ドラマ
  • 3兄弟の運命
  • 親子の別れ
  • 師弟関係
主要人物相関図 知っておきたい基礎知識

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