文楽編・菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

菅原伝授手習鑑TOP > ひもとく > 作中の人間ドラマ > 親子の別れ

前のページに戻る

ひもとく | 作中の人間ドラマ

親子の別れ

作者たちによって書き分けられた3組の親子の哀切な別れ。それぞれが『菅原伝授手習鑑』の大きな見どころです。

『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』には個人では抗えない大きな力に翻弄される親子の別れが描かれています。順を追ってご紹介しましょう。

左:苅屋姫(娘)、右:菅丞相(父)
左:苅屋姫(娘)、右:菅丞相(父)

最初は二段目。「道明寺」と呼ばれる「丞相名残の段(しょうじょうなごりのだん)」における菅丞相(かんしょうじょう)と苅屋姫(かりやひめ)の生き別れです。菅丞相は品格と高い教養の持ち主で、所作も緩やかで感情をほとんど表しません。しかし、娘との別れの場面ではこらえきれずに一瞥を投げます。内面をわずかな動きで見せる難しい役どころです。


左:桜丸(息子)、右:白太夫(父)
左:桜丸(息子)、右:白太夫(父)

次に、三段目の「桜丸切腹の段(さくらまるせっぷくのだん)」では桜丸と老父・白太夫(しらたゆう)の死に別れが描かれます。丞相流罪の責任を取って自害する覚悟の桜丸ですが、白太夫はなんとか思いとどまらせようとします。しかし、あらゆる予兆が死を暗示するので、桜丸の命はないものと観念するのでした。白太夫が嫁の八重(やえ)の心情を思いやりながら「泣くない」と声を掛け、八重が「アイ」と答える場面で物語は最高潮に達します。切腹する桜丸を介錯(かいしゃく)するのは、白太夫の鉦(かね)と念仏。白太夫70歳の「賀の祝(がのいわい)」を迎えた日の悲劇です。


左:小太郎(息子)、中央:松王丸(父)、右:千代(母)
左:小太郎(息子)、中央:松王丸(父)、右:千代(母)

最後は四段目の「寺子屋の段(てらこやのだん)」で、松王丸(まつおうまる)と我が子・小太郎(こたろう)の悲痛な死に別れの場面です。丞相の跡継ぎ・菅秀才(かんしゅうさい)の身代わりとして首を討たれる小太郎。続く首実検の場面でも、松王丸が小太郎の父であることは明かされていません。しかし、首を討つ音が聞こえた瞬間、太刀を落とし動揺する松王丸。「首討つたは紛ひなし、相違なし」と告げる声にも万感の思いがこもります。松王丸だけでなく、小太郎の母・千代(ちよ)の悲しみはいかばかりでしょう。恩のために我が子を身代わりにした切なさや苦しさが胸に迫ります。

作品の概要
  • 初段
    • 大内の段
    • 加茂堤の段
    • 筆法伝授の段
    • 築地の段
  • 二段目
    • 道行詞甘替
    • 安井汐侍の段
    • 杖折檻の段
    • 東天紅の段
    • 丞相名残の段
  • 三段目
    • 車曳の段
    • 茶筅酒の段
    • 喧嘩の段
    • 桜丸切腹の段
  • 四段目
    • 天拝山の段
    • 北嵯峨の段
    • 寺入りの段
    • 寺子屋の段
  • 五段目
    • 大内天変の段
名場面集
  • 許されぬ勘当
  • 菅丞相の涙
  • 菅丞相と苅屋姫との別れ
  • 白太夫と八重の悲嘆
  • 緊迫の首実検
  • 切なさ極まるいろは送り
作中の人間ドラマ
  • 3兄弟の運命
  • 親子の別れ
  • 師弟関係
主要人物相関図 知っておきたい基礎知識

ページの先頭に戻る