![平成14年(2002年)5月9日 第52回雅楽公演 国立劇場 [出演] 宮内庁式部職楽部](img/syutsuen_utamai01.jpg)
個々の楽曲などを複数組み合わせ、全体として1つとなるように作られた長大な組曲の形式をとり、4人または6人の舞人による舞がともなう国風歌舞です。
駿河国(するがのくに:現在の静岡県)をはじめ、都より東にあった諸国の風俗歌舞(ふぞくのうたまい:日本各地に伝わる歌舞)と、宮廷歌人によって新作された各地の神社を称(たた)える求子歌(もとめごのうた)を中心に、平安初期に整えられました。平安時代には神社の祭祀に宮中から使いが派遣されて舞い、神社に奉奏される歌舞でした。
一説には、昔、駿河国の宇戸浜(うどはま:三保の松原のあたりから南西の海浜)に天人が降りて歌い舞った姿をなぞらえ作られたとの伝承もあります。
室町時代に途絶えましたが、江戸期に復興され現在に至っており、近代以降は宮中祭祀の皇霊祭などにも採り入れられました。
「一歌(いちうた)」、「二歌(にうた)」、「駿河歌(するがうた)」、「求子歌」、「大比礼歌(おおびれのうた)」を中心に、組曲の形式によって構成されています。

舞人(まいにん)は、頭には巻纓(けんえい)や緌(おいかけ)をつけた冠(かんむり)をかぶり、そこに桜などの挿頭花(かざし)をつけて、白色の袍に、腰から太刀(たち)を下げて舞います。装束はおもに袍(ほう)と表袴(うえのはかま)からなり、白い練絹糸で織られた袍には、舞人は桐、竹、雉子(きじ)が、伴奏を担当する歌方(うたかた)は竹と雉子が描かれ、裾の紐で足首を結ぶ表袴には金色で表された州浜(すはま)に袍(ほう)と同じ模様が施され特徴的です。
歌と伴奏の楽器には高麗笛(こまぶえ)、篳篥(ひちりき)、和琴(わごん)、笏拍子(しゃくびょうし)が用いられます。
明るく軽やかな雰囲気があり、古くから好まれた歌舞の1つです。その美しさは『枕草子』や『源氏物語』にも記されるなど、王朝文学にも評判のよい歌舞だったようです。
演奏では、横笛のなかで最も高い音がでる高麗笛が旋律を奏でるため、全体的に高い音域が特徴の1つです。
また、演目の冒頭では、舞人は袍の袖を脱がずに着装した姿で登場しますが、「駿河舞」と「求子舞」の間に右袖を脱ぎ片肩袒(かたかたぬぎ)となります。
今日では春分・秋分の日の皇霊祭(こうれいさい:皇室の祖先をまつる儀式)、4月3日に行われる神武天皇祭(じんむてんのうさい)などで奏され、いずれも非公開です。宮中の祭祀のほか、京都の上賀茂神社・下鴨神社や八坂神社、奈良の春日大社、埼玉の氷川神社、日光の東照宮などでも奉奏され、これらは一般でも鑑賞できる機会となっています。