朗詠の歌詞は、漢詩文のなかの2つの句を読み下し、3部分にわけて歌われます。その旋律の形式は起承転結でとらえることができ、ゆるやかに流れる節と自由なリズムが特徴の歌謡です。
朗詠の歌詞は、漢詩文から抜き出した対句[同じ構成を持った2つの句]を基本とし、それを音読みで歌う『嘉辰(かしん)』を除き、基本は訓読みで読み下したものを用います。
歌唱の様式は、歌詞を一ノ句、二ノ句、三ノ句の3部分にわけ、各句とも冒頭部分は独唱で始まり、所定の箇所から助奏楽器が加わり斉唱になります。さらに、各句頭部分の独唱者は句ごとに入れ替わり、曲が進行していきます。
催馬楽(さいばら)が拍節的な歌であるのに対して、朗詠はゆるやかな無拍節の自由リズムが特徴です。
その旋律は理論化されておりませんが、形式を起承転結に置き換えてとらえることができます。曲目を、催馬楽のように呂(りょ)と律(りつ)にわけることもありません。
絶対音高がない朗詠の演奏では、その時々に応じて壹越調(いちこつちょう)、平調(ひょうじょう)や、盤渉調(ばんしきちょう)[それぞれ順に西洋音楽のD、E、Hの近似音高を主音とする調]など、主音を変えて唱われます。二ノ句の句頭が高音で始まること、音楽の流れを断ち切らないように詩句の切れ目と音楽の切れ目をずらす箇所があることなど、演出の工夫もみられます。
楽器は、笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき)が、歌の旋律をほぼ同じ音でなぞるようにたどり伴奏していきます。
[『嘉辰(かしん)』の構成]
句頭 | 斉唱 | |
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一ノ句 | 令月(れいげつ) | 歓無極(かんむきょく) 万歳千秋楽未央(ばんぜいせんしゅうらくびおう) |
二ノ句 | 嘉辰令月(かしんれいげつ) | 歓無極(かんむきょく) 万歳千秋楽未央(ばんぜいせんしゅうらくびおう) |
三ノ句 | 歓無極(かんむきょく) | 万歳千秋楽未央(ばんぜいせんしゅうらくびおう) |
[『紅葉』の構成]
句頭 | 斉唱 | |
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一ノ句 | 紅葉亦紅葉(こうようまたこうよう | 連峰嵐浅深(れんぽうのあらしせんしん) |
二ノ句 | 盧花亦(ろかまた) | 盧花(アろか) |
三ノ句 | 斜岸(しゃがんの) | 雪遠近(ゆきえんきん) |