多様な種類の楽器を合奏する形が、千年あまりにわたって伝えられてきた例は、世界にも類を見ません。ですから、管絃は「世界最古のオーケストラ」とも呼ばれています。また、指揮者が存在せず、互いに間合いをはかることで演奏の調和が図られることも、大きな特徴です。
管楽器・絃楽器・打楽器という、3つの楽器群が合奏される管絃。屋外で演じられることが多かった舞楽に比べ、おもに屋内で演奏を楽しみながらかたちが整えられてきたので、楽器の編成がやや小規模になる一方、舞楽にはない絃楽器が用いられます。
管楽器は笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき)、絃楽器は琵琶(びわ)・箏(そう)、打楽器は鞨鼓(かっこ)・太鼓・鉦鼓(しょうこ)で編成されます。
管絃の演奏は、それぞれの楽器の特色を生かし、その音色が絶妙に混じり合います。
楽器には、それぞれの奏法や音色に応じた役割があります。管楽器の龍笛と篳篥は旋律を奏で、笙は和音でそれらを包み込むのが主な役割。絃楽器の琵琶と箏は、拍節(はくせつ:等しい間隔で打たれる基本的なリズム)に縁取りを与える役目を果たします。また、打楽器の鞨鼓・太鼓・鉦鼓は、一連のリズムパターンを作って、楽曲のテンポを整えます。
雅楽では、西洋のオーケストラのような、指揮者という役割は存在しません。奏者の呼吸や間合いによって演奏が始まり、また終わるのです。
管絃の演奏においても、それぞれの奏者がほかの楽器の演奏を聞き、前列にいる奏者の手の動きを見て間合いをはかることで、まとまりのある合奏の音を作りあげていきます。西洋の音楽にたとえれば、室内楽のような演奏の仕方といえるかもしれません。
なかでも鞨鼓は、全体の流れを決める重要な役割を担い、経験豊富な年長者や楽長が担当することが多いようです。
[管絃の楽器編成]
管絃 | 唐楽 | 管楽器 | 笙、篳篥、龍笛 |
---|---|---|---|
絃楽器 | 琵琶、箏 | ||
打楽器 | 鞨鼓、太鼓、鉦鼓 |