現代の雅楽の世界では、伝統的な曲を演奏するだけでなく、現代の音楽家・演奏家たちによって雅楽器のための新しい曲も生み出されています。いにしえの響きは、新しい形を取り入れながら伝えられてゆくのです。

![平成23年(2011年)9月10日 第31回特別企画公演 国立劇場大劇場 [出演]伶楽舎](img/syutsuen_toki03.jpg)
第4曲「秋庭歌」
色彩やかに季節が移ろう様子を描くこの作品は、4つの楽器編成で演奏される。舞台中央に「秋庭」というグループ、舞台後方と客席には「木魂群」と呼ばれるグループが3つ配置されるのが特徴。四方向からの音が響き合い、空間全体でいろづいた木の葉が落ちる晩秋の庭を表現する。
国立劇場では、廃絶した楽曲の復曲だけでなく、雅楽器のための新しい作品を現代の作曲家に委嘱し公演を行っています。世界的な評価の高い音楽家・武満徹(たけみつとおる)も、管弦楽曲「秋庭歌 一具(しゅうていが いちぐ:昭和48年[1973年]発表、昭和54年[1979年]に改訂増補)」を作曲しました。6曲からなり全体で50分を超える壮大なこの曲は、雅楽器の伝統的な技法を用いながら、通常とは異なる編成で新しい響きを生み出しており、その特性を効果的に引き出すことに成功したといわれています。
近年になって、雅楽を、従来の儀式的な音楽としてでなく「鑑賞する音楽」として楽しもうという動きがみられます。雅楽器の音色を生かしたポピュラー音楽の作曲・演奏をするアーティストや、古典雅楽の曲をアレンジし、ジャンルにとらわれない即興演奏を行う音楽集団など、日本古来の響きを再評価する動きは、若い世代にも広がりをみせています。