足利直義(あしかがただよし)が鎌倉山に構えた御殿が完成し、諸大名を招いて盛大な饗応(きょうおう)の宴が開かれます。高師直(こうのもろのう)が、家来・鷺坂伴内(さぎさかばんない)を供に登城しました。一向に恋を叶えぬ顔世御前(かおよごぜん)の話などをする所へ、加古川本蔵(かこがわほんぞう)が面会を願いました。鶴が岡での遺恨を晴らしに来たに違いないと2人は身構えます。
ところが、本蔵は、主人・桃井若狭助(もものいわかさのすけ)が無事に饗応役[接待役]を勤められるよう力添えを、と丁寧に挨拶しました。そればかりか、次々と贈答の金品を並べました。あまりの意外さに呆然とする師直と伴内。すっかりまるめこまれ、態度を一変させました。師直は、本蔵に登城の同道まで勧め、本蔵は城内へ入って行きました。