文楽編 仮名手本忠臣蔵 Kanadehon Chushingura

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背景を知る 史実から創作へ

史実から創作へ 時代と人物の設定

元禄時代に起きた「赤穂事件」を題材にした『仮名手本忠臣蔵』。しかし、物語は南北朝時代の鎌倉という設定ではじまり、事件の関係者は実名で登場しません。作者は、事件を匂わすエピソードや人物を登場させ、巧みに「赤穂事件」を描いたのです。

『太平記絵巻』7巻
『仮名手本忠臣蔵』の「大序・恋歌の段」に脚色された、『太平記』の高師直の逸話。
(埼玉県立歴史と民俗の博物館所蔵)

江戸幕府は、同時代に起こった事件、特に政治的事件を、そのまま脚色・上演することを禁止していました。当時「現代劇」を上演する場合、原則として過去の時代に置き換える必要がありました。『仮名手本忠臣蔵』は、南北朝時代の軍記物『太平記(たいへいき)』の「世界[時代背景や場面設定]」を借りて創作されました。

『太平記』は、元禄期以降さかんになった辻講釈によって庶民もよく知っている物語でした。よく知られた物語の人物を借用することで、浅野(あさの)・吉良(きら)という実名を伏せたままでも観客には何の事件の話かわかるようになっていたのです。時代背景を変えることによって、作者は新しい劇的工夫を加えることができ、また観客はすでに知っている話をどのような新しい趣向で観せてくれるかを期待しました。事件の裏に隠された、人間の生の真実と運命の悲劇を描くことに、作者は腕をふるったのです。

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