寄席の番組[出演プログラム]で一番前に出演するので前座と呼びます。落語家志願者は希望する師匠に許しを得て、初めて入門がかないます。しかし、すぐに前座になることはできません。まず見習い修業をします。師匠の身の回りの世話や掃除洗濯などをこなし、楽屋に入っても大丈夫と認められて初めて前座となります。楽屋でお茶を出し、師匠方の着付けを手伝い、同じ内容の演目が重複することを避けるために演目を楽屋備え付けの帳面に書き記し、太鼓を叩くなど、寄席の進行に必要な労働をこなします。その合間に落語の稽古をし、師匠の許しが出ると高座に上がれるようになります。
入門3年から5年くらいで、師匠や所属の団体、寄席の経営者などの判断により二ツ目に昇進します。ほぼ年功序列で昇進しますが、例えば立川流の場合は落語を50席演じられること、歌舞音曲(かぶおんぎょく)ができること、講談の『三方ヶ原軍記(みかたがはらぐんき)』の修羅場が読めること、一連の前座修業ができていることという基準があります。二ツ目になると、師匠の身の回りの世話から解放され、楽屋勤めもなくなります。また紋付きの着物と羽織を着ることができるようになり、専用の出囃子(でばやし)ももつことができます。寄席では二番目の出番となります。ただし、出演者の数は限られているので、前座より出演の機会も収入も減ってしまうため、自分で勉強の場を開拓する努力が必要になります。
二ツ目になって10年ほどで、師匠などの判断により真打に昇進となります。ただし昇進の規準は所属団体によってまちまちです。落語芸術協会は年功序列。落語協会や圓楽一門会も年功序列が慣例ですが、時折、年数が短くても落語の実力や人気があれば、抜擢で昇進する場合があります。また圓楽一門会は多くの場合、5年ほどで真打になるという特色があります。立川流は落語が100席演じられることと、師匠と観客に認められることという基準があります。
真打になると「師匠」と呼ばれ、弟子を持つこともできます。
本来の真打は、寄席興行で最後に出演する実力があるという意味をもっていましたが、現在はむしろ真打になってからの方が落語家人生が長く、一人前の落語家としての出発点ととらえることが多いようです。