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浪花の夏祭り・宵宮

夏祭りの囃子

『夏祭浪花鑑』「釣船三婦内(つりふねさぶうち)の段」「長町裏(ながまちうら)の段」に流れる「だんじり囃子」を聴き比べてみましょう。

文楽『夏祭浪花鑑』「釣船三婦内の段」
幕開けの下座音楽 賑やかな「だんじり囃子」で幕が開ける
劇中の下座音楽 釣船三婦の家では、高津神社の 宵宮「だんじり囃子」が、遠くに聞こえる
文楽『夏祭浪花鑑』「長町裏の段」
泥場の下座音楽 祭り太鼓「ド~ンデ~ン」で 団七(だんしち)が義平次(ぎへいじ)に止めをさす
幕切れの下座音楽 祭りの賑わいが最高潮に達したなか、  祭りの喧噪[だんじり囃子]にまぎれ、 団七は 逃げ去っていく
演奏:望月太明藏社中(もちづきためぞうしゃちゅう)
文楽『夏祭浪花鑑』の下座音楽で使用する和楽器「双盤(そうばん)」と「大太鼓(おおだいこ)」

文楽『夏祭浪花鑑』の下座音楽で使用する和楽器「双盤(そうばん)」と「大太鼓(おおだいこ)」

人形浄瑠璃や歌舞伎では、芝居を盛り上げるための「下座音楽」が欠かせません。『夏祭浪花鑑』では、「だんじり囃子[高津神社の祭囃子の設定]」が、印象に残るのではないでしょうか。この「だんじり囃子」は「囃子方」が担当しています。義太夫節は、太夫三味線が情景などすべてを表現するので、囃子方は補助的役割となりますが、その表現は豊かです。戦の遠寄せは、大太鼓・鑼(どら)・法螺貝(ほらがい)。雨音は太鼓。大太鼓による雪音、千鳥・鶯・蛙の鳴き声や、谺(こだま)まで表現します。

人形浄瑠璃『夏祭浪花鑑』の「だんじり囃子」は、 人形遣い・2代目桐竹勘十郎(きりたけかんじゅうろう)と、囃子方・望月太明藏社中(もちづきためぞうしゃちゅう)が、昔の「附(つけ:古典曲を演奏するときに使用する譜面)」を元に、演奏[打ち方]を復活工夫しました。大太鼓と、双盤(そうばん:鉦[かね]の一種)を使用し、基本は「チキチン チキチン チキチン ガンガン」という同じリズムの繰り返しですが、太夫や三味線の邪魔になってはいけません。小さな音量でゆっくり演奏したり、立ち廻りの場面では荒々しく演奏するなど、緩急自在に舞台効果を高めます。

上方の下座音楽と江戸の下座音楽では、楽器の奏法や囃子などの選択が異なるといいます。人形浄瑠璃を歌舞伎化した『夏祭浪花鑑』でも、昨今、人形浄瑠璃で使う「だんじり囃子」を使用しない場合が多くなってしまったようです。上方特有の囃子を味わえるのも、『夏祭浪花鑑』を鑑賞する楽しみのひとつといってよいでしょう。

下座(げざ)
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下手(しもて)の小幕(こまく)の上の御簾内(みすうち)で囃子方が演奏する効果音をいいます。


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