【本名題】『北條九代名家功(ほうじょうくだいめいかのいさおし)』
【初演年】明治17年(1884年)11月
【初演座】猿若座
【ジャンル】活歴物
【おもな配役】
9代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう、47歳)が北條高時(ほうじょうたかとき)、3代目中村仲蔵(なかむらなかぞう、76歳)が秋田城之助(あきたじょうのすけ)、市川権十郎(いちかわごんじゅうろう、37歳)が大仏陸奥守(おさらぎむつのかみ)、4代目中村福助(なかむらふくすけ、19歳:のちの5代目中村歌右衛門)が衣笠(きぬがさ)に扮しました。
黙阿弥69歳のときの作品です。
9代目團十郎が試みた、史実重視かつ写実的な歴史劇である「活歴(かつれき)」の代表的な作品で、鎌倉幕府の末期から南北朝の争いまでを描いた軍記物語『太平記(たいへいき)』を題材としています。正式な名題は『北條九代名家功(ほうじょうくだいめいかのいさおし)』です。
この『北條九代名家功』は3幕から構成されており、横暴を極める北條高時が天狗(てんぐ)になぶられる物語(上の巻)のほかに、大敵の首を討った後に自らも切腹して果てる本間山城(ほんまやましろ)の忠義(中の巻)、新田義貞(にったよしさだ)が海中に太刀を投げ込むと潮が引き道が開けるという奇跡(下の巻)となりますが、現在では上の巻のみが残って『高時』という名題で上演され、「新歌舞伎十八番(しんかぶきじゅうはちばん)」のひとつにも数えられています。
活歴物の作品は、地味な内容から観客受けが悪く、9代目團十郎の死後はほとんど受け継がれることがありませんでしたが、本作『高時』は今日まで上演が続いている例外的な作品です。