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材木問屋の白子屋(しろこや)では、主人が亡くなって以来、家運が傾いていました。後家のお常(おつね)は、店に恩義を感じていた車力(しゃりき)の善八(ぜんぱち)の世話によって、一人娘のお熊(おくま)に持参金附の婿をとり、その金で店を立て直そうと考えます。ところがお熊は、白子屋の手代・忠七(てだい・ちゅうしち)と恋仲でした。忠七が店への忠義の気持ちと婚礼を嫌がるお熊の間に挟まれて悩んでいるところへ、ふたりが恋仲である事を立ち聞きした髪結新三(かみゆいしんざ)がやってきます。新三は忠七の髪を整えながら、店からお熊を連れ出すようにそそのかします。お熊からも駆け落ちを迫られ、忠七は店への忠義を捨ててお熊と逃げる事を決意します。
激しい雨の中、忠七と新三は永代橋までやってきます。忠七の下駄(げた)の鼻緒が切れたのをきっかけに新三の態度が豹変(ひょうへん)し、忠七は騙された事に気付きます。縋(すが)り付く忠七を新三は傘で散々に殴り、下駄で蹴ってその場を立ち去ります。残された忠七は、途方にくれて川へ身投げをしようとしますが、侠客(きょうかく:町の顔役)の弥太五郎源七(やたごろうげんしち)に止められて命を救われます。
お熊を手に入れた新三は、朝湯から帰って来ます。高価な初鰹(はつがつお)を買うなど、大金が入る事をあてにしながら、新三は白子屋からの使いを待ちかまえています。そこへ善八と共に源七がやってきて、10両でお熊を返すように掛け合います。しかし、源七の親分風をきかした態度が気に食わない新三は、金を叩き返した上にさんざんに悪態をついて源七を辱めます。新三に遺恨を抱きながら、源七はこの場を立ち去ります。
家主(いえぬし)の長兵衛(ちょうべえ)のもとへ、善八が新三との掛け合いを頼みにやって来ます。長兵衛は30両でお熊を取り戻す事を善八に約束し、ふたりで連れ立って新三の家へと向かいます。
家主の長兵衛が掛け合いにやってきます。さすがの新三も、老獪(ろうかい)な長兵衛には敵(かな)わず、お熊を30両で返す事を承知させられます。さらに30両の半分の15両と家賃滞納分の2両、その上に鰹の半身までも長兵衛に巻き上げられてしまいます。新三はあまりの悔しさに地団駄を踏みますが、ちょうど折しも長兵衛の家に空き巣が入り、箪笥(たんす)の物をそっくり持っていかれたという話を聞いて、溜飲を下げるのでした。
新三から受けた恥辱(ちじょく)を恨む源七は、賭場(とば)から帰る新三を待ち伏せします。雨の閻魔堂で源七は新三に斬り掛かり、ふたりの立廻り(たちまわり)の後、激しい血しぶきをあげながら新三は絶命します。
注釈:ここでは、国立劇場の歌舞伎公演をもとに、「あらすじ」を紹介しています。
台本は、『黙阿弥全集』第11巻に収録されています。