歌舞伎編「黙阿弥」

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作品の紹介

代表作品

青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)

概要
あらすじ
鑑賞のポイント
コラム
白浪五人男(しらなみごにんおとこ)は実在した?

 白浪五人男の頭分(かしらぶん)日本駄右衛門(にほんだえもん)のモデルは、延享期(1744年~1748年)に活動した実在の盗賊、日本左衛門(にほんざえもん)です。大勢の手下を率いて東海道沿いの8ヶ国で強奪(ごうだつ)を繰り返し、延享4年(1747年)に処刑されました。事件の記録が数多く残っていますが、弁天小僧菊之助(べんてんこぞうきくのすけ)ら4人の名前は記されておらず、五人男のうち実在したのは日本駄右衛門だけのようです。不要な殺生はせず、最低限の道理をわきまえた盗賊だったようで、そこから「盗みはすれど非道はせず」というキャラクターが造形されることになります。
 日本左衛門の処刑後、その事件は格好(かっこう)の題材となり、歌舞伎・実録(じつろく)・講釈(こうしゃく:近代以降[講談(こうだん)])において虚実(きょじつ)入り交ぜて脚色が重ねられました。江戸幕末期に書かれた『青砥稿花紅彩画』は、日本左衛門を題材にした数々の先行作から多様な逸話(いつわ)を取り入れて構成されていますが、五人男のうち日本駄右衛門以外のメンバーは、その過程で登場した名前なのです。

「豊国漫画図絵(とよくにまんがずえ)」
「豊国漫画図絵」
弁天小僧菊之介

 本作の構想のもとになった「豊国漫画図絵」は、3代目歌川豊国(うたがわとよくに)が安政6年(1859年)から翌年にかけて制作した全29図の役者絵のシリーズです。実際の興行とは無関係に、人気役者が歌舞伎や講釈[講談]の登場人物に扮した絵で、日本左衛門の講釈[講談]・実録で通称「東海白浪(とうかいしらなみ)」を取り上げており、日本駄右衛門・南郷力丸(なんごうりきまる)・忠信利平(ただのぶりへい)らが描かれています。
 全29図のうち唯一モデルが見つからない役が、弁天小僧菊之助です。描かれているのは、女装した弁天小僧が刺青(いれずみ)を見せて盗賊の正体を表す場面で、役者は3代目岩井粂三郎(いわいくめさぶろう)です。5代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)の回想によると、絵草紙屋(えぞうしや:絵草紙や錦絵などを売る店)に並んでいたこの絵に魅了され、黙阿弥に歌舞伎にしてほしいと自ら依頼したといいます。その後に日本駄右衛門・南郷力丸・忠信利平の絵も出版されたため、これらをまとめて五人男に仕組むことになったというのです。
 つまり弁天小僧菊之助という魅力的なキャラクターは、豊国の自由な発想によって生まれたとも考えられますが、シリーズ中唯一モデルがいないことは少々不自然です。黙阿弥はこのときすでに白浪五人男の構想を温めており、興行の宣伝のために豊国に描いてもらったという説もあるのです。

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