日本三大敵討の一つ、荒木又右衛門(あらきまたえもん)らの敵討ちの実話をもとにした『伊賀越道中双六』。全十段の壮大な物語です。
主人公は、江戸時代の剣客として知られ、敵討ちの助太刀、つまりサポートをした荒木又右衛門。作中での名は唐木政右衛門(からきまさえもん)。岡山藩士渡辺数馬(わたなべかずま)、作中では和田志津馬(わだしずま)の父親が、和田家にささいなことで恨みを持った沢井股五郎に殺されたことが発端となりました。敵討ちをはたすために、志津馬と政右衛門はそれぞれに、股五郎を追いかけて、鎌倉から東海道を西に向かっていきます。当時庶民の間で流行ったという道中双六に見立てて、物語が旅情とともに繰り広げられます。
『伊賀越道中双六』は、近松半二(ちかまつはんじ)の傑作であり、最後の作品です。敵討ちのために、登場人物たちは、夫婦、親子、兄妹の情を断ち切り、ときには自らの命までも犠牲にします。東海道の各地で繰り広げられる様々な人間ドラマを『伊賀越道中双六』で、たっぷり楽しんでください。