鎌倉の長谷寺(はせでら)の若い僧侶・自久坊(じきゅうぼう:のちの清玄)と稚児・白菊丸(ちご・しらぎくまる)の心中です。白菊丸は江の島の稚児が淵に身を沈めますが、怖気(おじけ)づいた自久坊は生き残ってしまいます。
それから17年、自久坊は新清水の高僧である清玄(せいげん)となっていました。目の前に現れたのは白菊丸の生まれ変わり桜姫(さくらひめ)でした。吉田の御家の桜姫は、盗賊の釣鐘権助(つりがねごんすけ)に犯されて赤ん坊を産み落としています。清玄阿舎利は破戒堕落(はかいだらく)の罪を引き受けて、桜姫ともども寺を追放されました。
破戒堕落の清玄と桜姫は鎌倉の稲瀬川で晒し者(さらしもの)にされます。
破れ衣に破れ傘の落ちぶれた姿になった清玄は桜姫の産み落とした赤ん坊を抱きながらさまよいます。隅田川の河畔の三囲神社(みめぐりじんじゃ)で恋い慕う桜姫と再会しますが、それは暗闇のなかでのすれ違いでした。
落ちぶれた清玄は本所岩淵の庵室で青蜥蜴(あおとかげ)の毒を飲まされて殺されます。しかし、雷の落ちたショックで蘇生(そせい)した清玄は桜姫に再会します。清玄は桜姫が稚児・白菊丸の生まれ変わりである、という因果譚(いんがたん)を語ります。桜姫に取りすがろうとする清玄は釣鐘権助が掘った墓穴に落ちて出刃包丁で喉(のど)を刺し息絶えます。青蜥蜴の毒でできた清玄の顔の痣(あざ)は権助の顔の痣になりました。実は清玄と権助は幼いときに別れた兄弟だったのです。清玄の亡魂(ぼうこん)は火の玉となって桜姫と権助の跡を追って行きます。
釣鐘権助は浅草山の宿(やまのしゅく)の家主(いえぬし)になっています。桜姫は風鈴お姫(ふうりんおひめ)という源氏名(げんじな)で千住(せんじゅ)の小塚原(こづかっぱら)の女郎になりましたが、夜な夜な清玄の幽霊が現れるので山の宿の家に帰らされています。清玄の幽霊から、桜姫の父を殺して吉田の御家の重宝(ちょうほう)を盗み御家を没落させたのは権助だと知らされます。桜姫は権助と、権助の間に生まれたわが子を殺し、御家の重宝である都鳥の一巻(みやこどりのいっかん)を取り戻します。
浅草の三社祭で賑わうなか、桜姫は吉田の御家の再興を果たし、めでたく大団円(だいだんえん)となります。
ここでは、現在上演されている場面を中心に、「あらすじ」を紹介しています。
初演時の台本は、「鶴屋南北全集」第6巻に収録されています。