『隅田川』を鑑賞する

  1. 『隅田川』
  2. 『隅田川』を鑑賞する
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  4. その五 我が子の幻との再会

その五 我が子の幻との再会

能(宝生流)『隅田川』
平成19年4月20日 国立能楽堂
〔シテ〕三川淳雄 〔子方〕山内晶生 〔ワキ〕宝生閑

すでに月も出て、夜が更けました。人々が念仏を唱えて梅若丸を供養する中、梅若丸の母は深い悲しみに沈み、できることといえばただ泣き伏すことだけです。渡し守は、多くの人が念仏を唱えているけれども、母であるあなたが弔ってこそ梅若丸は喜ぶでしょうと励まし、鉦鼓(しょうご)と撞木(しゅもく)を手渡します。我が子のためと母は嘆きをこらえて立ち上り、鉦鼓をたたき念仏を唱えます。すると塚の中から「南無阿弥陀仏」と唱える梅若丸の声が聞こえてくるのでした。母はもう一声聞かせてほしいと、塚に向かって一心に念仏を唱えます。今度は声だけでなくさらに、塚の中から梅若丸の亡霊が姿を現しました。母が梅若丸を抱きしめようと手を差し伸べて近づくと、亡霊はその手をすり抜け、塚の中へと消えてしまいます。泣き悲しむ母の前に、梅若丸の亡霊はもう一度姿を見せますが、それも束の間のこと、ふたたび消えてしまうのです。母の目の前に残るのは、明けて行く空の下に見える草がぼうぼうと茂る塚だけなのでした。
塚の作リ物の中から聞こえる子方の高い声は、重く心に響いてくるシテ・ワキ・地謡(じうたい)の念仏の低音域の声とは対照的に、鋭く心に突き刺さるように届きます。その後に、塚の中から現れるかわいらしい子方の姿は目に見える形で、もう1度悲劇を強調しています。

  • 大念仏
  • 子方の演出
その四


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