『隅田川』を鑑賞する

  1. 『隅田川』
  2. 『隅田川』を鑑賞する
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その三 渡し守の語り

能(宝生流)『隅田川』
平成19年4月20日 国立能楽堂
〔シテ〕三川淳雄 〔ワキ〕宝生閑 〔ワキツレ〕大日方寛

一同が乗り込み渡し守が舟を進めると、対岸から念仏の声が聞こえてきました。旅の男に念仏のいわれを尋ねられ、渡し守は1年前の今日3月15日に起こった1人の少年にまつわる悲しい出来事を語りはじめます。その少年は、都から人商人に連れられて、慣れない旅の果てに病となり、この隅田川で命を落としたのでした。語り終える頃には対岸に着きました。渡し守は、都からの旅人もいるようなので、その少年の供養の大念仏に加わるように乗り合わせた人々を促します。人々が舟を降りる中、狂女は動けずにいます。そして、その出来事の年月、少年の名、父親の名、母親のことをもう一度確認するように、渡し守に問いかけます。なんとその狂女こそが、少年の母親だったのです。それを知った渡し守は母親に同情し、少年の墓(はか)である塚へと案内して、弔いをすすめるのでした。


舟の中の場面ですが、舟を表す作リ物[舞台装置]は出さずに進行します。ワキが素襖(すおう)の右肩を脱ぎ、棹を持ちます。シテは舞台真中よりやや脇座[舞台向かって右側]へ出て座ります。ワキツレはシテのすこし後方左側へ座り、ワキは2人の後ろに立ちます。3人のバランスが美しく印象的な場面です。

  • ワキの重要性
その二


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