『隅田川』を鑑賞する

  1. 『隅田川』
  2. 『隅田川』を鑑賞する
  3. 鑑賞のポイント
  4. その二 我が子への思い

その二 我が子への思い

能(宝生流)『隅田川』
平成19年4月20日 国立能楽堂
〔シテ〕三川淳雄 〔ワキ〕宝生閑 〔ワキツレ〕大日方寛

登場の囃子「一声(いっせい)」で、笠をかぶり、笹を手にした女物狂、梅若丸の母が登場します。子を思う親の心情を謡いながら橋掛リを進み、本舞台に入り「カケリ」という動きをします。「カケリ」は笛・小鼓・大鼓で演奏され、シテは舞台を小さく2周します。1周目はゆっくりとした動きですが、2周目にはテンポが速まります。急激にテンポが変化する動きと囃子は、梅若丸を思うあまりに乱れている母の心を表現しています。「カケリ」の後、いとしい我が子を人商人にさらわれて、心乱れながらもその行方を尋ねてさまよっている女であることを名乗り、隅田川にたどり着きます。女は渡し守に舟に乗せてくれるように頼みます。しかし渡し守は、面白く狂ってみせなければ舟に乗せないと条件を出すのでした。そこで女は、隅田川の渡し守ならば舟に乗れというはずなのにと『伊勢物語』の東下りの段をふまえて言い返します。さらに在原業平の和歌「名にしおはばいざ言問(ことと)はむみやこどり我が思ふ人はありやなしやと」を口ずさみ、隅田川に見える白い鳥の名前を問います。都鳥と答えてこそのところを、「沖の鴎(かもめ)」と答えてしまう渡し守の無風流さを嘆き、また都鳥に妻のことを問いかけた業平と、恋しい梅若丸の行方を問いたい思いでいる自分を重ねるのでした。渡し守は母の子を思う心と、風流さに感服し、舟に乗るように促します。

  • 詞章
その一

カケリ

能の主人公の心理的な動揺や苦悩、狂乱などを表現する所作のひとつです。

閉じる

ページの先頭に戻る