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能(喜多流)『葵上』平成12年3月11日 国立能楽堂〔シテ〕塩津哲生 〔ワキツレ〕山本順三
六条御息所は「枕に立てる破(や)れ車、うち乗せ隠れ行かうよ」と退場する時、着ていた唐織(からおり)から両腕を抜くと、そのまま唐織を高々と被き、さらに低く身をかがめた姿勢で、葵上を表す小袖に近づき覆いかぶさるようにしてから退場します。この一連の動きは、車争いで壊された御息所の車に、葵上の魂を乗せてこっそりと連れて行こうとする様子を表現しています。また、生霊の姿が一瞬で消え失せてしまった印象を観客に与えます。この「破れ車」は、車争いで壊された御息所の車ばかりではなく、地獄で罪人を乗せて運ぶ車、火車(かしゃ)をも連想させます。葵上の命を奪おうという御息所の生霊の執念を感じさせる場面です。
能(喜多流)『葵上』 平成12年3月11日 国立能楽堂 〔シテ〕塩津哲生 〔ワキツレ〕山本順三
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